これまで1,000件以上のクラウドファンディングをプロデュースしてきたスバキリ一味。ひとつのプロジェクトに複数のメンバーが関わり、全員で目標金額の達成を目指して動きます。そのなかでのライターの役割は、プロジェクトオーナーさんのお話を直接じっくりと伺い、文章へと仕上げていくこと。そのため、終了したプロジェクトであっても、「その後、どうなったかな……?」と非常に気になります。
この「聞かせて!プロジェクトオーナーさん」は、そんなスバキリ一味のライターたちが持ち回りで、今まで担当したなかで特に印象的だったプロジェクトオーナーさんに対談をオファー。プロジェクト実施中や、その後の話を聞かせていただき、クラウドファンディングの実態を深掘りします。
第8回目のゲストは、クラウドファンディング開始約40分で目標金額の100%を達成し、最終的には700万円近くの資金を集めた株式会社CLEAIR社長の星山忠俊さんと、開発担当のクレアさん(仮名)です。
2023年1月23日、公開からわずか40分で、目標金額の101%を達成。さらに、その勢いはとどまらず、公開から一週間を経た1月30日には、500%達成。最終的には762%達成の6,863,550円という驚異的な成果を収めたプロジェクトがこちらです。
このプロジェクトの成功の秘訣は、プロジェクト計画前からX(旧Twitter)で地道に発信を続けていたこと。クレアウィンフィルター(※)ができることとできないことを科学的根拠に基づき淡々と伝え続けていたことにあります。
※クレアウィンフィルターとは株式会社CLEAIRさんで販売している、エアコンに貼り付けるだけでウイルスをパワフルにキャッチする中性能フィルター。
クラウドファンディングではこのフィルターを使った「クレアウィンボックス」の製造と普及のためのご支援をお願いしました。
公開前にすでにお気に入り登録が73件あり、公開時には400以上のリポスト(旧リツイート)を記録しました。
公開日当日の勢いは以下の通りです。
8:00 – プロジェクト公開
8:05 – 目標の18%を達成
8:10 – 50%達成
8:25 – 97%達成
8:41 – 101%達成
11:58 – 200万円に迫る勢い
12:26 – 200万円突破
13:38 – 250万円突破間近
15:00 – 250万円突破
さらに、1月26日には400万円、1月30日には450万円を超えました。
「クレアウィンボックス」という単語がXでのトレンド入りも果たし、多くの人々からの注目を集めました。
なぜこのように驚くほどの勢いがついたのか、そのためにどのような行動をしていたのか、成功の秘訣は何なのかをライティングを担当した副島が聞いてみます!
これからクラウドファンディングに挑戦しようと考えている方々にとっても、この対談は参考になるのでぜひご一読ください。
クラファンに挑戦したのは認知度を上げるためと資金調達のため
ご無沙汰しています。クラウドファンディングでの大成功おめでとうございました!早速ですが、なぜクラウドファンディングに挑戦しようと思ったのか、からお話を聞かせていただけますか?
クレアウィンフィルターの認知度が低かったため、認知度を上げようと思いました。また、クレアウィンボックスのキーデバイスとしてボックス型のファンが必要なのですが、このファンの購入のために資金が必要でした。
ボックス型のファンは、アメリカ製のものを個別に購入するか、中国製のものを大量に購入するか、どっちかなんですよね。しかも、その時点での資金も限られていました。
中国から輸入するための最小ロットがいくつっておっしゃっていましたっけ?
中国製のものだと、出荷のためには最低、1500台から2000台と言われましたね。しかしそんな予算もなく2000台を生産しても売れるかどうかはわからないので。
交渉の結果、500台まで数量を減らせました。クラウドファンディングが終了した後、その500台はすぐに注文しました。
クラウドファンディングをする際に、なぜスバキリ商店を選ばれたのですか?
もともとは別の会社でクラウドファンディングを考えていたのですが、スバキリ商店さんの方がいいとの声を聞いたので。
「いい」という具体的なポイントは何だったのでしょうか?
クラウドファンディングの実績がしっかりとしているという話を聞いていました。特に、具体的な成果を出しているとの評判を耳にしたことが決め手となりました。
僕らは2人だけの会社で、さらにお互い株式会社CLEAIR以外の仕事もしています。そのためクラファンのための文章を書く時間もありません。スバキリさんは文章作成からリターンの入力、申請までしていただけるので助かりました。
「自分たちが情熱と理性に基づいて正しいことをきちんと発信できるかどうか」というのが成功のポイント
とにかくこのクラウドファンディングは勢いがすごかったですよね。このように支援が集中した理由は何だと思われますか?
やはり以前からXで発信しているのが大きかったです。
Xは2021年1月に開設したのですが、最初僕らの商品であるクレアウィンフィルターは、疑いの目で見られましたよ。悪徳業者だと思われたこともよくあったし、取り組みに対する疑念の声や批判も多くありました。しかしそれに対して、僕らの目的や取り組みについて淡々と説明してきました。
すると、最初は僕らを嫌っていた人たちがだんだんとファンになってくれて。
そういう熱心なファンの方から、クラウドファンディングをしてほしいという声が上がっていました。さらにコロナも感染者が多くなっている時期だったため、あのタイミングでクラウドファンディングをすることにしたのです。
なるほど。クラウドファンディングをする前から熱心なファンの方々がいらっしゃったのですね。
僕らは2021年から真面目にコツコツと発信しています。この2年間で「正しいことを正しく伝えている」という信頼ができたのだと思います。
科学に基づいて、自分たちができることとできないこと、どうしてそれが必要なのかということを発信し続けました。そこに共感してくださる、コロナでとても困っている方々が情報を拡散してくれました。
だからこそ公開からわずか40分で、目標の100%を超えるという驚異的な結果を収めたのだと思います。そうでなければ、こんな段ボール箱にフィルター挟んだものを誰も買わないと思います。
本当に効果のあるものだということを、事実に基づいて発信してこられたからこそなのですね。
クレアウィンフィルターやクレアウィンボックスを売りたいのは、金儲けのためというわけではないのです。僕たちのもともとの志が「こんなつまらない世の中をなんとかしたい」というところで。
そのスタンスは何も変わっていないし、これからも多分変わらないでしょう。
だからまず信じてもらうために、「自分たちが情熱と理性に基づいて正しいことをきちんと発信できるかどうか」というのが成功のポイントなのかなと振り返ると思います。
なるほど。そうやって地道に正しいことを正しく、誇張することもなくただ淡々と良さを伝えられてきた活動が今回実を結んだのですね!
論文執筆・新商品開発・販売網の取り組みなどすることはたくさん!
2023年2月からは、仙台市のいくつかの学校にもクレアウィンボックスが設置されたのですよね。そしてそのデータを集めて、今クレアさんが論文を書いてらっしゃるとお聞きしました。
そうなんです。論文は作らなければいけないのですが、考えるときは時間が必要で、その時間が今取れていません。
他にはどのような活動をされていますか?
営業をコツコツしています。
みんな目の前に危機がないと取り扱ってもらえないので、今はいざというときに広まるためのネットワークづくりや、販売網の取り組みをしています。
医療関係の販売卸しさんにコンタクトを取っていて、そちらでの取り扱いがもうすぐ始まります。
取り扱いということは、クレアウィンボックスを病院にも置くということですか?
そうですね。医療関係卸しさんの理事会でプレゼンテーションをして認めてもらいました。
それは素晴らしいですね!病院に設置となるとさらに信頼性も高まりますね。
新商品に関してですが、首から下げるタイプの「クレアウィンミニファン」という商品もHPで見ましたが。
クレアウィンミニファンはお守り程度の機能で、そのデメリットも商品説明にちゃんと書いているのですが、お守り程度でも欲しいという方が大勢います。申し訳ないなと思っているので別の商品の開発もしていますが、なかなか手が回りません。
別の商品とはどのようなものですか?
クレアウィンボックスの性能のおよそ半分から三分の二ぐらいの能力ですが、大きさはクレアウィンボックスの五分の一程度です。小型化してそこまで邪魔にならないし、電源内蔵のためコードがいりません。そのため、例えば学校で呼吸器系の既往症のある子どものそばに置いておくこともできます。
それはいいですね!商品化の時期の目途はついていますか?
それだけにかかったらすぐできるんですけど。他の仕事もしていて忙しいからなかなかです。製造元が中国なので、試作品をみながらやり取りしています。いろいろ指示をして、チェックもするので結構時間がかかるんですよ。
お忙しいとは思いますが、その商品が出来上がったら助かる人がたくさんいますよね。楽しみにしています!
クレアウィンフィルターを使ってまだやりたいことがあるんです。
鳥インフルエンザと豚熱なんですが、たぶんこの中性能フィルターは役に立つと思います。インフラとしても安価で設置できます。
鳥や豚の感染症が見つかり殺処分になって、養鶏や養豚をしている方が泣いているのを見たらなんとかしたいと思って。
だから取り組んでいきます。
人間に対して効果があるとお医者様が認めだしてくれると、農林水産省とか厚生労働省とかも動かしていけると思うので、そういうところを目指して頑張っていきます!
クラウドファンディングが自分たちの独りよがりじゃなく、困っている人に寄り添えるかどうか
今後クラウドファンディングに挑戦したい方に対して、成功のコツのアドバイスがあればお願いします。
僕は本当に何もしていませんが、拡散力のあるところで興味を持ってもらえるような準備があったらすごくいいんだなということは見ていて思いましたね。
たまたま僕らがやったことは、商売というよりも社会的な課題みたいなのがあったので、問題意識を持っている方たちがすごく仲間になってくれたというのがありました。だから、一般的な何かをものを売るときにはこうした方がいいよ、みたいなパターンではないんじゃないかなと正直思っています。
なので僕らがもしこの成功事例をもとに、次違う商品をやったとき、同じことにはならないと思います。
それだけ世の中に困っている人がいてるんですよ。クラファンやりますということが自分たちの独りよがりじゃなくて、世の中の皆さんに届くかどうかっていうのを大切にしてほしいなと思います。
社会貢献というのがちゃんとくっついていることじゃないと、成功しないんじゃないですかね。空気とか水とか見えないんですよね。だとしたらどういうふうに届く言葉に変換するか。
例えば僕、喘息持っているんですけど、クレアウィンフィルターがあると寝てる間の喘息の発作が収まるんですよね。
他にも、家庭内で感染した人がいてクレアウィンボックスを設置したら感染が広がらなかったという事例もあります。嘘と思われるかもしれませんが、でも嘘ではないからそれを知ってほしい。
皆さんの生活の中でこんな役に立ちますというのを、人に寄り添う部分を深掘りして伝えたらいいのかなと思います。困っている人は必ずいるので、その人たちがコアな購入層になってくれると思います。
スバキリさんには感謝しかありません
今回のクラファンを終えての感想はいかがだったでしょうか。
スバキリさんにはもう本当、感謝しかないです。うちはちょっと特殊なケースだったかもしれません。でも間違いなくこういう事例がスバキリさんにはあったっていう事実はあるので。やはりクラウドファンディングをするならスバキリさんにお願いするといいんじゃないかな。スバキリさんに任せれば大丈夫だってことは言えますね。
今回僕たちがクラファンをしたサイトがCAMPFIREに残っているのが結構嬉しくて。何年後とか何十年後とかにこういうことを俺らやったんだぜみたいなのを、子どもたちにも言えますよね。
クレアウィンフィルターが当たり前にある社会を目指して
日本のインフラにこのような中性能フィルターが全然足りてないよなっていうのは、今すごい実感しているんですよ。
僕たちの目指しているところは、みなさんにクレアウィンフィルターやボックスを売ることではなく、これがきっかけになって最終的に「この社会インフラを誰が作ったんか知らんけど、どこに行っても当たり前にあるよね」という状態にしたいのです。
そうなると、我々の子どもや孫、ずっと先の全然見ず知らずの他人さんの子どもまで守れるんです。
本当になんか長くやっているお祭りみたいなもんですよ。
対談を終えて
今回、クラウドファンディングですばらしい成功を収めた株式会社CLEAIRさんの背景や今後の取り組みをインタビューさせていただきました。
私は事前に、クレアさんがXでコツコツと情報を発信し続け、すべてのリポストに返信しているという情報だけは知っていました。しかし、実際にお話を深掘りすると、最初は悪徳業者だと思われていたところから、淡々と事実を伝え続け信頼を勝ち得、今では熱心な支持者までいるという過程はなかなかできないことだと感じました。
たぶん最初は(今でも?)心無い言葉を言われたことがたくさんあると思うのです。それでもぶれずに淡々と、気負うことなく、「自分たちが情熱と理性に基づいて正しいことをきちんと発信できるかどうか」の姿勢を貫く……
なぜそれができるのかは、クレアさんのおっしゃっていた「こんなつまらない世の中をなんとかしたい」という志をお持ちだからこそなのでしょう。
「お金のためではなく、社会のために」というクレアさんの姿勢が、このプロジェクトの成功を一時的なものではなく、持続的なものにしているのだと感じました。
このフィルターが将来的には社会の一部として定着し、さらに多くの問題への解決策としての可能性があること。また、鳥インフルエンザや豚熱などの問題にも役立てられるのではないか。そう考えると実現が待ち遠しい気持ちになります。
私たちの暮らしをより良くするための株式会社CLEAIRさんの熱意と努力に、深く感銘を受けたインタビューでした。
・社会的に意義がある商品はずっと売れ続ける
・困っている方に寄り添える商品は、熱心なファンを生む
上記2点を改めて実感しました。
星山さん、クレアさんありがとうございました!
取材・執筆―副島かよこ