クラウドファンディングは資金調達だけでなく、新しいビジネスモデルや製品を世に送り出す手段として活用されています。市場調査や顧客獲得の機会としてクラウドファンディングを実行するケースも増えています。
クラウドファンディングを物販目的で行う5つのメリットや、成功した事例から分析した目標達成の秘訣を詳しく解説します。
これから新規事業を立ち上げようと計画中の個人事業主や、既存のビジネスに新たな展開手段を模索している会社の皆さん、必見です!
物販ビジネスとクラウドファンディングの相性
クラウドファンディングで物が売れるのか?結論、クラウドファンディングで物は売れます。それも、実行者が予想もしない反響が起きるケースも少なくありません。
何故、クラウドファンディングで物が売れるのかということについて、掘り下げていきます。
物販目的でクラウドファンディングを行う5つのメリット
物販ビジネス目的でクラウドファンディングを行うことには、5つのメリットがあります。
1. 独自性の高いブランド構築
2. テストマーケティングの場
3. フィードバックによるデータ収集
4. 顧客獲得につながるコミュニケーション
5. 初期資金の調達:生産コストを支援者から先に集められる
詳しく解説していきます。
1.独自性の高いブランドづくりに役立つ
クラウドファンディングを物販ビジネスに活用する上で、最もメリットとなるのは、独自性の高いブランドイメージを確立できる点です。
クラウドファンディングには、目的を実現するためのストーリー性が重要になります。どこにでもある商品を売るのではなく、オンリーワンの商品を売る。これがクラウドファンディングで物販し、成功する上で必要不可欠な要素です。
オンリーワンの商品=独自性の高いブランディングされた商品、と考えると、クラウドファンディングを実行することは、物販ビジネスで重要なブランディングを確立する機会なのです。
ブランディングとは、消費者へ向けて自社商品が持つストーリーを通じて商品の価値をわかりやすく伝え、商品や事業に対する信用を築くことです。商品の特性や製作された背景など、商品企画には物語が必ずあるはずです。クラウドファンディングを実行することで、販売する商品の物語を伝えることが出来、商品や自社のブランディング戦略が確立出来るのです。
2.商品のテストマーケティングができる
クラウドファンディングを物販目的で行うメリットとして、その商品が市場や消費者に受け入れられるかどうかを試すことが出来ます。資金や時間をかけた商品が売れない。物販で最も避けたい現実は反響が無いことです。
クラウドファンディングを実行することで、商品に対する世間の反応を一般発売の前に確かめることが出来るのです。
3. 支援者からのフィードバックを集めることができる
クラウドファンディングで物販を行うことで、商品に対する反響を知るだけでなく、支援者からの意見を商品改良に活かすことが出来ます。色やサイズ別の展開比率などのデータを集めることもできますし、年齢や性別といったターゲット層の把握、クラウドファンディング限定価格での販売を行うことで実売価格設定の目安としても活用できます。
4.ロングエンゲージメント顧客とのコミュニケーションがはじまる
クラウドファンディングを実行することで、アーリーアダプターと呼ばれる初期反応者との関わりが出来ます。最初に反応してくれた支援者は、商品の応援者としてリピーターになる可能性が高いだけでなく、コアなファンとして末永く購入してくれる未来の顧客候補です。
ロングエンゲージメント、末永く商品を愛用してくれる人たちとコミュニケーションが始まる。これもクラウドファンディングで物販を実行する重要なメリットなのです。
5.商品の開発費用を調達できる
クラウドファンディングは、資金調達の手段です。物販目的でクラウドファンディングを実行することで、商品の開発費用を支援金として集めることが出来るのです。初期費用の一部だけでもクラウドファンディングで調達できれば、銀行への融資を依頼する際に事業の将来性がある実例証拠として評価される場合もあります。
クラウドファンディングは物販ビジネスを育てることができる
クラウドファンディングは物販ビジネスをゼロから育てていくことに活用できます。なぜなら、5つのメリットのうち、ブランディング、テストマーケティング、フィードバックの3つはマーケティング、支援者とのコミュニケーションは顧客管理そのものだからです。マーケティング、顧客管理、そして資金調達。どの要素が欠けても、物販ビジネスは続けられません。
物販ビジネスに欠かせないマーケティングでやるべき全ての要素が、クラウドファンディングを実行するだけで組み立てられます。それだけでなく、支援者とのコミュニケーションが取れることで顧客リストが作れ、DM の送付や SNS のフォロワー確保など顧客管理も同時に始められます。商品への反響が良ければ、開発費用を支援金から全額賄うこともできます。
クラウドファンディングと物販ビジネスは、相性が良いだけでなく、商品を育てていく上で最適な組み合わせだと言えます。
クラウドファンディングでは宣伝活動と広報活動が両方できる
クラウドファンディングは、自社の商品を多くの人に知ってもらう宣伝活動であり広報活動でもあります。プロジェクトを実行することで、両方の活動を一度に行うことが出来る点も、物販ビジネスでクラウドファンディングを活用する重要なメリットです。
クラウドファンディングを実行することが宣伝活動と広報活動になる理由について解説していきます。
宣伝と広報の持つ意味の違い
クラウドファンディングの成功には、プロジェクトの目的を伝える宣伝活動と広報活動が不可欠です。宣伝と広報は同じように思われますが、微妙に違います。
- 宣伝活動=自社商品やサービスの内容をユーザーに理解してもらい、購入に繋げること
- 広報活動=情報発信を通じて企業(または組織)と顧客や取引先との関係性を構築すること
宣伝は、商品を購入してほしい人に向けての具体的な情報発信。広報は購入者だけでなく、関係するすべての対象に向けた商品やサービスだけでなく事業全体としての情報提供。
クラウドファンディングを実行することで、商品の販売に関する具体的な情報を発信すると同時に、新聞や雑誌への情報提供にもなるのです。
クラウドファンディングにおける宣伝と広報の役割
クラウドファンディングを実行するときに行う宣伝活動と広報活動にはそれぞれ別の意味があります。大きく分けると、支援者または支援者候補へ向けて行う活動3つとメディアや世間一般にむけて行う活動3つです。
クラウドファンディングでの宣伝活動3つ
クラウドファンディングを実行するときに行う宣伝活動は4つあります。
- 関係者へプロジェクトを実行することを案内する
- 支援の呼びかけとプロジェクトを拡散する協力を求める
- 支援者とのコミュニケーションを取る
これらは、実行者の関係者や支援者との直接的なコミュニケーションです。プロジェクトへの興味関心を高め、目的に対する共感を強くする具体的な行動が重視されます。
クラウドファンディングでの広報活動3つ
クラウドファンディングを実行するときに行う広報活動は主に3つです。
- 実行目的が伝わりやすく、見た人の共感を生むプロジェクトページを作る
- プレスリリースの作成と発信
- SNS 上でプロジェクトに関する投稿を発信したり、広告を掲載する
プレスリリースやSNSでの発信は、不特定多数に向けたものです。もちろん、具体的なターゲット層が決まっているのなら、そのターゲットが関心を持つキーワード選定や SNS のアクセスが集中する時間帯での発信などの工夫や発信テクニックが必要となります。
具体的なプレスリリースを発信することで、取材の問い合わせが入るケースもあります。
もっと詳しい情報が知りたい、と思わせるイメージ画像やキーワードを発信することで、プロジェクトページへと誘導することが、クラウドファンディングでの広報活動が持つ役割です。
「柚子胡椒」と「ハチミツ」の 成功事例と分析
今回、成功事例としてスバキリ商店でプロデュースした2つのプロジェクトを分析して、クラウドファンディングでの物販が可能であること、宣伝効果や広報活動にもなることについて解説します。
「柚子胡椒」と「ハチミツ」。どちらも食品ですが、嗜好品の性質が高い商品です。スーパーで数百円の商品に、その10倍のお金を払って手に入れたい人がいる。興味のない人からすると、信じられないかもしれませんが、これこそ、クラウドファンディングならではの物販です。しかも、どちらも宿泊施設が実行したプロジェクトです。
それぞれのプロジェクトが何故成功したか、具体的に解説します。
お気に入り登録にこだわった壱岐の「火練り柚子胡椒」プロジェクト
プロジェクトの実行者は、長崎県の壱岐島にあるビューホテル壱岐。
壱岐島にしかない「鳶色火練り柚子胡椒」を全国に届けたいという目的で、プロジェクトが実行されました。実は、このプロジェクトでは、「お気に入り登録」にこだわって事前に宣伝活動が行われたという裏話があります。
公開初日に50万円を達成した「お気に入り登録」の威力
「お気に入り登録」とは、クラウドファンディングの成功を左右するともいえる宣伝活動です。
- プロジェクトページが完成したら、ページの URL 限定公開
- プロジェクトに興味を持ってくれたら「お気に入り登録」をしてもらうように案内
- 「お気に入り登録」した人の大半は、初日での支援をしてくれる傾向が高い
- プロジェクトの初動が目標金額の20%を超えると、成功する確率が高まる
これは、クラウドファンディングの成功鉄則ともいえる活動なのですが、ビューホテル壱岐さんは、「お気に入り登録」者を事前にしっかり集めるという方針で事前告知を行った結果、なんと!
夜8時からのプロジェクトページ公開にもかかわらず、初日に目標金額50万円を達成!
もちろん、「火練り柚子胡椒」単体での金額ではありませんが、それでも1か月で、4,000円の柚子胡椒リターンが57個、10,000円の柚子胡椒とふぐ刺し、ブルーベリーの3つに宿泊割引券までついたリターンが24個という結果から見ても素晴らしい販売実績だと思います。
リターン設計から分析する200万円超えの理由
このプロジェクトで最も人気だったリターンは、4,000円「火練り柚子胡椒」でした。次いで、6,000円の食事券、10,000円の「柚子胡椒&ふぐ刺し&ブルーベリー&宿泊割引券」、34,000円の「柚子胡椒付2名分平日宿泊券」この4つのリターンで、支援総額の約55%となる118万円の支援が集まっています。
高額リターンは、95,000円の特別宿泊プランと50,000円の企業スポンサーが支援されていますが、支援総額への影響はわずかです。リターン設計の鉄則でもある「松竹梅の価格設定法則」が結果に反映されていると言えます。
プロジェクトの目的である「火練り柚子胡椒」に対する興味関心が高い人や、食に興味関心の高い人へプロジェクトが認知されたということ、そして過去にビューホテル壱岐を利用したことがある人や壱岐島へ行きたいと思っていた人などにもプロジェクトが認知された結果と判断することが出来ます。
活動報告で地元をアピールし地域活性と広報活動を両立する
このプロジェクトの活動報告では、ビューホテル壱岐の紹介はもちろんのこと、壱岐の観光情報や東京で火練り柚子胡椒が食べられる飲食店の紹介など、地元を大切にする姿勢や支援者とのコミュニケーションをしっかりと取ろうとする姿勢が見られます。毎日のように投稿を更新されている点も、プロジェクトの高い評価につながっていると考えられます。
現地でしか買えなかった商品を全国で認知してもらうという広報活動として、またビューホテル壱岐自体の宣伝活動としても大変効果があったプロジェクトだと判断できるのです。
「お気に入り登録」と初日達成率の重要性については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ご参考ください。
歴史から生まれた足尾銅山の「非加熱ハチミツ」プロジェクト
同じく、宿泊施設が実行した「非加熱ハチミツ」のプロジェクトです。実行者は、栃木県にある、四季の彩りに風薫る足尾の宿 かじか(旧国民宿舎かじか荘)の支配人、小野崎 一さん。
地域活性の一環として無添加非加熱で作られるハチミツを全国に知ってほしいという目的でプロジェクトを実行。
追加リターン3回!同一リターンの追加が成功した貴重な事例
このプロジェクトでの最大のポイントは、過去に類を見ないほどの同一リターンの追加回数です。
ハチミツ単体で、なんと130人の支援!目標金額100万円の65%をハチミツで達成したという、驚異的な結果となっています。
これは、コロナ禍以降の健康への関心度が高まったことや、オーガニックや自然食品という食の安全を重視する人の増加、天然ハチミツへの需要が高いことなどの社会的な流れとプロジェクトの目的が一致した結果と言えます。
成功の理由はリターン設計のバランスにあり
リターン全般から見ると、数千円から数万円単位の幅広い価格帯で、さまざまなリターンが支援されていることから、プロジェクトの目的とリターン設計が支援者に受け入れられた成功事例です。
ちなみに、ハチミツ以外のリターンでは、ハチミツを使用した3,000円のロールケーキや10,000円の足尾地区お土産品セット、20,000円の食事つき宿泊券、25,000円の特別宿泊券などが人気リターンとなっています。
企業スポンサー権の支援も複数あり、スポンサーリターンだけで44万円が支援されていることから、かじか荘自体への信用に対する関係者からの支援も結果を後押しする効果となっています。
食品リターンは数千円での低価格設定になりがちですが、このプロジェクトは130個という支援実績で数多くの人から支援を集めることに成功しています。それだけでなく、数万円単位のリターンや30万円の高額リターンも支援されており、非常にバランスのとれた支援の集まり方が目標額達成とネクストゴール成功につながったと考えられます。
歴史遺産と名産品で地域広報にもつながったケース
このプロジェクトの実行により、無添加非加熱ハチミツだけでなく、宿泊施設としてのかじか荘や、キャンプ目的や歴史価値といった点からも足尾地区への関心が高まるきっかけとなり、地域活性への効果も期待できると考えられます。
足尾銅山の坑道を利用した熟成ハムやワインなど、独自性の高いサービスがあるということや、キャンプ利用もできるという情報などが、プロジェクトを実行したことで発信されます。その情報が、インターネット検索などで、近郊の人や全国の人に伝わることで、観光客が増える可能性があります。
クラウドファンディングで地域の名産品を販売することで、名産品の宣伝効果だけでなく、地域独自の魅力を広く伝える広報活動にもなり、地域活性に繋げることが出来るのです。
クラウドファンディングで物販をするにあたり、リターン設計について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参考ください。
まとめ クラウドファンディングでの物販はビジネスを軌道に乗せる手段になる
クラウドファンディングで商品を販売することは、物販ビジネスを軌道に乗せるために必要なマーケティングから宣伝、広報まで全ての要素を試すことが出来ます。ブランディングから、商品やサービスの宣伝、対外的な広報活動、そのすべてを一度に行えるのが、クラウドファンディングです。
クラウドファンディングを成功させるには、いくつかの条件があります。物販ビジネスも同じです。商品をたくさんの人に届けるためには、何が必要か。その試行錯誤を何度も繰り返し、共感を得られるまで行った努力の結果が、今回紹介した2つの成功事例だとも言えます。
世の中には、たくさんの良い商品があります。クラウドファンディングを通じて、商品やサービスとそれを必要とする人が出会うことができる。
スバキリ商店は、クラウドファンディングで物販に挑戦するプロジェクトの実行もサポートし続けていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
クラウドファンディングでの物販 + α なら、スバキリ商店
スバキリ商店でプロデュースしたプロジェクトの半分以上は、新商品やサービスの販売目的で実行されています。食品だけでなく、アパレル、書籍、化粧品などさまざまなジャンルで、累計1300件を超えるプロジェクトをサポートしてきた実績があります。
マニアックな商品開発に挑戦したいけれど、資金の調達で悩んでいる人は、ぜひ一度、スバキリ商店へご相談ください。物販×地域活性など、物販との組み合わせで相乗効果が出た過去事例も多数あります。
ビジネスとして成り立つかどうか、という基本的な視点から、代表の小西がアドバイスいたします。
「はじめてのクラウドファンディング」電子書籍を出版しました
スバキリ商店代表、小西の2作目となる書籍「はじめてのクラウドファンディング」がkindle出版致しました。
kindleunlimited にご登録済みならば、なんと無料でお読みいただけます!
クラウドファンディングについて知りたい人は、ぜひダウンロードしてください。
ちなみに、紙で出版した書籍はコチラです。
併せてご購入のほど、よろしくお願いいたします。