食品ロスを“もったいない”で終わらせない時代に
日本では年間約500万トン以上の食品がまだ食べられるのに廃棄されており、その一部は小売店や食品製造業や卸業の現場からも発生しています。
近年、SDGs(持続可能な開発目標) やESG(Environmental, Social, and Governance investment = 環境や社会、企業の管理体制から持続可能な成長を目指す)経営の観点からも、企業にはフードロスへの対応が求められています。
しかし「対応したいけどコストが…」「在庫リスクや人手不足で手が回らない」といった現場の声も少なくありません。
そこで今注目されているのが、クラウドファンディングを活用したフードロス削減の取り組みです。
食品製造業が持つ「見落とされた強み」とは?
多くの食品メーカーや製造業者には、以下のようなフードロス対策に有利な資源があります。
- 製品の規格外品や試作品など、販路はないが品質には問題ない商品
- 食品加工のノウハウや衛生管理体制
- 地元の食材やオリジナル製法といった「物語性のある資源」
これらは「売りにくい」「需要がない」「使いづらい」と思われがちです。しかし、クラウドファンディングを活用すると、これらは「見落とされた資源」という隠れ資産なのです。
これらの隠れ資産は、消費者の“共感”を得る材料となる価値があり、クラウドファンディングと組み合わせると強みに変えられ流のです。
クラウドファンディング活用で「共感」と「資金」を同時に得る方法
クラウドファンディングでは、プロジェクトの背景・想い・課題意識が支援者の心を動かします。
食品関連業者がフードロス対策に挑む姿勢は、次のような形で共感を集めやすくなります。
- 「もったいない」をなくしたいという誠実な想い
- 普段は市場に出ない裏メニュー・限定セットの提供
- 環境配慮や地域貢献を組み込んだパッケージ設計
たとえば、規格外の焼き菓子を詰め合わせて「食品ロス応援セット」として販売したり、規格外で出荷できない地元の農産物を使用した加工品をリターンに設定した事例があります。
クラウドファンディングを活用することで、共感から支援が集まることで、フードロス対策ができ、事業の赤字化を防ぐだけでなく、消費者とのつながりをふかめられるのです。
フードロス×クラウドファンディング活用の成功事例 業種別3事例
スバキリ商店では、コロナ禍にいくつもの食品プロジェクトをプロデュースすることで、フードロスを回避する取り組みを成功させました。
実際にクラウドファンディングでフードロス対策を成功させた事例を業種別で3例紹介します。今回紹介するプロジェクトは全て、スバキリ商店がプロデュースした事例です。
事例1:製麺業者による消費期限間近の乾麺プロジェクト
賞味期限切れ間近の細うどんと冷麦、そうめんをクラウドファンディングで消費者へ届けた成功事例です。

実行者は香川県で創業80年以上の乾麺製造業をしている 株式会社さぬきシセイ。
そうめんやひやむぎは夏の食べ物。そんな市場からの間違った認識を覆すことと、季節はずれ商材として扱われてしまった乾麺を美味しく食べられるうちに消費者へ届けたいという目的でクラウドファンディングに挑戦。
こだわりの製造過程をもつ製品は、全国の家庭に喜ばれ、目標額30万円の10倍以上となる400万円もの支援を獲得しました。
クラウドファンディングにより、地元以外にもファンを増やし、食品廃棄を回避したお手本となる事例です。
事例2:卸業者による出荷キャンセル食材のプロジェクト
宿泊施設や飲食店へ商材を卸す食品卸業が実行したフードロス対策成功事例を紹介します。




実行者は、食品卸会社のアップサイド。
最初は燻製ナッツを紹介するプロジェクトを実行したことをきっかけに、「クラウドファンディングでも食品が販売できるのなら、もしや」と、コロナ禍の影響で外食需要が激減したため、出荷キャンセルとなった食材を販売することに。
国産うなぎから始まり、ドライフルーツ、明太子などさまざまな余剰食材を一般家庭で消費してもらうという一連の流れは、クラウドファンディングが単なる資金調達ではなく、企業も消費者も両方に得となる第三の流通手段としての活用ができることを証明しています。
流通先を一般家庭へシフトチェンジする経路確保として、クラウドファンディングが活用できるのです。もし、また余剰在庫が出そうな場合は、支援者へ直接案内が出来るというメリットは、直接販路を持たない卸専門業にとって活路になるでしょう。
事例3:小売店による農家も子どもも救った余剰米救出プロジェクト
コロナ禍では、さまざまなフードロス問題が起きましたが、クラウドファンディングを活用することで社会問題を解決する取り組みを始めた事例もあります。

実行車は、北海道の米問屋 加藤商店カクイチ。
コロナ禍で出荷できないままの新米を全部買い取るためにクラウドファンディングを実行。
買い取る目的は、フードロスだけでなく、契約農家が余剰米を機にすることなく稲作を続けられるようにする配慮、そのお米を子ども食堂へ寄付することで、子育て支援にもなるという一石三鳥なもの。
コロナ禍で起きたさまざまな社会問題を解決するためという社会貢献への取り組みが多くの人の共感を集めました。
目標額100万円の倍以上となる226万円の支援を集めたプロジェクトは、その後もふるさと納税を活用するなど、企業独自の取り組みとして継続されています。

食品とクラウドファンディングは相性が良い組み合わせですが、フードロスや地域課題、子育て支援など社会貢献活動と組み合わせることで、三方良しな活動を始めることもできます。
自社の経営面だけでなく、地域貢献や社会貢献のためにも、クラウドファンディングは今後、ますます活用されることでしょう。
クラウドファンディング成功のための3つの設計とは
クラウドファンディングを実行するにあたり、プロジェクトを成功させるためには押さえるべき3つの設計があります。
その3つとは、プロジェクトのストーリー設計、リターン設計、マーケティング設計です。
その① 共感されるストーリー設計
クラウドファンディングで成功するには、共感を集めることが絶対条件です。そのためには、プロジェクトの目的へ共感されるストーリーが重要になります。
ストーリーというのは、その食品がどのような価値があるかという生産製造でのこだわりや特徴をわかりやすく伝えることです。会社の歴史や背景なども、伝え方次第で共感される要素になります。今、困っている状況を正直に伝えることも、クラウドファンディングでは応援される要素なのです。
「なぜクラウドファンディングに取り組むのか」「何を変えたいのか」を明確に伝えることで、実行者の想いが消費者へ届きやすくなり、支援につながるのです。
その② 支援したくなるリターン設計
クラウドファンディングの成功には、支援をすることで得られる見返りも欠かせない要素です。
特に、食品系のプロジェクトでは、価格と品質のバランスが支援をするかどうかの判断基準になりやすいため、他のプロジェクトよりも「値ごろ感」や「クラウドファンディング限定」という部分が求められる傾向があります。
- 規格外品や限定商品を“特別感”のあるパッケージに工夫する
- 生産者からのお礼文をつける
- 今回限りでのセット組をする
- 支援者限定でレシピ紹介やアレンジ例を動画で提供する
お金を掛けなくても少しの工夫で「特別感」を出すことが出来ます。成功している過去プロジェクトを参考にして、人気リターンの真似をするのもリターン設計する上でおススメです。
リターン設計の基本については、以下の時期で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

その③:消費者へ知ってもらうマーケティング設計
クラウドファンディングを成功させるには、コミュニケーション力が求められます。消費者とのコミュニケーションをとるには、SNS を活用したマーケティング設計が必要です。
クラウドファンディング自体、マーケティング要素が強い性質を持っています。SNS を活用した広報活動を積極的に行うことで、プロジェクトへの興味関心を集め、結果として企業の認知度を上げることに繋がるのです。
- SNS でクラウドファンディングに挑戦する準備段階から、情報発信する
- 公式ホームページにクラウドファンディングのプロジェクトページのリンクを貼る
- プレスリリースでプロジェクトの意義を多くの人に届ける
- 関係各所へクラウドファンディングの案内を書面やメールで行う
- クラウドファンディングのチラシ配布やポスター協力を求める
- 支援者のコメントに丁寧な感謝を返信する
- 活動報告を随時更新し、最新情報を共有する
これらをきちんと意識して設計することで、プロジェクトへの支援だけでなく中長期的な顧客とのつながりも生まれます。
クラウドファンディング最大のメリットは、「応援してくれるファンとのつながりを結べる」点にあります。マーケティング設計を重視した準備を行うことで、プロジェクトの成功と顧客獲得が叶うのです。
まとめ:クラウドファンディングは、食品業界の未来を変える「挑戦の場」
クラウドファンディングは、生産者から製造業、卸業、そして飲食店や小売店まで食品に関わる全ての業種の未来を変える可能性を持つ「挑戦の場」です。
食品業界が抱えるフードロス問題は、決して後ろ向きな課題ではありません。余っているところから、足りないところへ届ける。その取り組みをスムーズにする仕組みのひとつが、クラウドファンディングだと言えます。
フードロス対策に限らず、多くの社会問題の解決は一つのきっかけから始まります。
クラウドファンディングは、その第一歩。資金だけでなく、社会的評価・新たな販路・企業文化の変化を引き寄せる力を持っています。自社の強みを再発見することで、商品のコアなファンと出会い、社会的価値を高めるチャンスなのです。
「もったいない」から始まる、サステナブルな挑戦。
今こそ、あなたの会社の隠れた強みを活かすためにクラウドファンディングを活用するときなのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
フードロス対策クラウドファンディングなら、スバキリ商店へ
スバキリ商店は、食品関係のクラウドファンディングを数多くプロデュースしてきました。累計1,400件以上のさまざまなジャンルでのプロジェクトを実行者さんとゼロから立ち上げた豊富な実績があります。
クラウドファンディングをよく知らない人でもわかる電子書籍も出版しています。
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そんな場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください!
