「子どもたちにやってあげたいことはたくさんある。でも、予算が足りない…」
教育現場や児童福祉施設に関わる皆さんなら、一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。
今、地域や社会から共感を集め、資金を調達する方法として「クラウドファンディング」が積極的に活用されています。
今回は、教育や福祉の現場でクラウドファンディングを活用した5つの成功例と実行のための成功のルール5つをご紹介します。
クラウドファンディングとは?教育現場での活用イメージ
クラウドファンディングは、「こういう事をやりたい!」という想いに共感した人からインターネットを通じて資金を集める仕組みです。商品開発だけでなく、教育や福祉など行政では補え切れない課題解決にも活用の場が増えています。
教育・福祉分野での活用例
クラウドファンディングを活用する例として、以下の活動があります。
- 学校の図書室や音楽室のリニューアル
- 特別支援学級の教材開発
- 児童福祉施設の体験学習プログラム
- 地域の子ども食堂や居場所づくり
寄付型や購入型(リターン型)など形式は様々。教育現場では「寄付型」が相性のいいケースが多く見られます。
クラウドファンディングと寄付の違い
クラウドファンディングと寄付の違いは、双方向性があるかないかにあります。
クラウドファンディングは、単なる「寄付」とは違い、支援者とプロジェクトが双方向につながる仕組みです。
寄付は、匿名で行われる場合も多く、善意の一方通行になりがちですが、クラウドファンディングでは活動の背景や想いを発信し、共感した人が「応援団の一員」として支援します。
例えば、プロジェクトの進捗を共有したり、お礼のメッセージや活動報告を届けることで、支援者は「自分も子どもたちの未来づくりに関わった」と実感できます。
こうした双方向の関係性こそが、クラウドファンディングの大きなメリットです。活動の輪が広がり、地域や社会とのつながりが生まれるきっかけにもなります。
クラウドファンディングと寄付の違いについて、詳しく知りたい場合は以下の記事をご参考ください。

なぜ今、教育現場でクラウドファンディングが必要なのか?
クラウドファンディングは、教育現場にこそ必要だと言えます。その理由について、3つの点から解説していきましょう。
子どもたちの学びの機会が広がる
クラウドファンディングを教育現場に取り入れることは、子どもたちの学びの機会を広げます。
2021年に小学校の学習指導要項が改訂され、「探究型教育」が重視されるようになりました。
また、「プロジェクト学習」といった、体験型の取り組みを増やし、社会で活躍する素地を育てる教育方針へと移行しています。
クラウドファンディングを地域振興活動の一環として行えば、資金集めだけでなく、プロジェクト設計や広報活動など、子どもたちが「社会の仕組み」を学ぶ教育機会にもなります。
予算不足を補う新たな資金調達手段
クラウドファンディングは、予算不足を解決する独自の資金調達手段にもなります。教育の充実には、充分な資金という後ろ盾も欠かせません。
公的な予算だけではまかなえない教育活動や地域の有志で運営する施設などを、市民や企業の支援で実現できます。
地域や社会とつながれる
クラウドファンディングは、お金と人を両方集めることができる仕組みです。教育という目的で、多くの支援者理解者と繋がることができる。クラウドファンディングの本質を活用すれば、教育コミュニティを作ることも可能です。
プロジェクトを通じて保護者はもちろん、地域住民や全国にいる教育に関心のある人々ともつながるチャンスになります。
教育現場でのクラウドファンディング 成功事例5つ
高校、学童保育、個人塾、放課後等デイサービス、身体づくりといった、子どもたちの教育に関わるクラウドファンディング事例を紹介します。
5つとも、スバキリ商店でプロデュースさせていただいたプロジェクトです。
①高校の学生寮を改装するクラウドファンディング
学校の施設を改装するにも、クラウドファンディングが活用できます。

和歌山県の学校法人 南陵学園が運営する、和歌山南稜高校。この高校は、2022年に経営破綻で新入生の募集が停止され、2024年に事業継承がされて、新しい経営体制になりました。
全国大会出場のバスケットボール部や空手部、野球部、吹奏楽部と県内外にその実力が知られる南陵高校。2年間、新入生ゼロという現状で、1学年のみの在籍生徒で学校は継続されました。
全ての負債を完全に解消した、2024年7月にクラウドファンディングを初挑戦。

1度目のクラウドファンディングでは、総額500万円という高い目標額だったこともあり、苦戦。それでも、100人以上の支援者から130万円近い支援があり、在校生の学習環境を整備することに役立てられました。
2度目の挑戦では、学生寮の改装ということで、目標額50万円は無事クリア!そのうえ、前回よりも支援者数が2倍の240人、2回のネクストゴールで総額148万円まで支援が延びました。
スバキリ商店では、この2度目のクラウドファンディング挑戦をプロデュースさせていただきました。
2025年は、新入生の募集が再開され、改修された新しい学校で授業や部活動が行われていきます。
②民間学童保育施設を立ち上げるクラウドファンディング
こちらは、元警察官が立ち上げた民間の学童保育施設のプロジェクトです。

大阪府守口市で初となる民間学童保育施設、「KIDS FAMILY」
元大阪府警で警察官をしていた中野拓真さんは、共働きの家庭に子育て支援と子どもたちが体験によって成長できる居場所を提供したいと、起業。2021年にクラウドファンディングを実行し、2022年4月から児童の受け入れが開始しました。
体育の教員免許や介護福祉初任者、メンタルケアなどの資格も取得しており、運動から語学力、パソコンまで幅広い体験ができる施設という点が多くの支援者から信頼され、目標額100万円を超える126万円もの支援が集まりました。
その活動は、関西テレビでも取り上げられ「となりの人間国宝」として認定されています。
③学習塾の改装クラウドファンディング
こちらは、個人経営の学習塾でのクラウドファンディングです。

広島県にある、個別指導学習塾「濱崎アカデミー」濱崎亨さんは、塾の移転に伴い、自習室を広くして、生徒同士がお互いに教え合い、学力を伸ばせる環境づくりのために、2021年クラウドファンディングを挑戦。

「教え愛」という他人に教えることが一番学ぶ機会になるという独自の取り組みや「楽しく学ぶ」という濱崎さんの考え方に多くの支援が寄せられ、目標額50万円に対し3倍を超える160万円の資金が集まり、無事、塾の全面改装が行われました。
④フリースクールクラウドファンディング
こちらは、勉強はしたいけれど学校に行けない子どもたちのためのフリースクールのクラウドファンディングです。

栃木県那須塩原市にある不登校支援フリースクール「Apple Baum」さんのプロジェクト。個別指導の学習塾運営から、2021年にフリースクールを開設。
利用する児童数が増えたことによる移転費用とフリースクールを必要としている親子への認知を高める目的で、2022年にクラウドファンディング挑戦。子どもたちが学びやすい環境づくりに多くの共感が集まり、目標額70万円に対して上乗せとなる100万円を超える支援結果となりました。
⑤誰もが通える親子支援プログラムのクラウドファンディング
機能訓練や基礎体力向上を目指す親子への支援プログラムのクラウドファンディング事例です。

京都府で活動する株式会社 Conditioning Lab 代表の佐々木 阿悠佳さんの実行プロジェクト。

地域コミュニティ「ハッピーライフコンディショニング」を10年以上運営し、「垣根を超えてみんなまんなかに」という理念から、病気や身体的障がいがあっても参加できる「個性を活かすLab親子塾 Shining」を立ち上げるため、2024年にクラウドファンディング挑戦。
10年地域で活動してきた実績と、枠を取っ払い一人一人を大切にするという姿勢がたくさんの人から応援され、200万円という高い目標額をさらに超えた254万円もの支援が、236人の支援者から集まりました。
成功するクラウドファンディング 5つのルール
どうすれば教育現場でクラウドファンディングを取り入れて、成功できるのか。
それには、成功する5つのルールを守って実行することです。
ルール1. 明確なゴール設定
クラウドファンディングで成功するには、誰もが納得し応援したくなる明確なゴール設定が必要です。
特に重要なのは、「なぜ?」の部分です。
クラウドファンディングに協力してほしい理由=クラウドファンディングに挑戦する理由、なのです。
「お金が必要」それだけでは、クラウドファンディングは成功できません。
「なぜ、お金が必要で、そのお金でどんな未来が待っているのか」
ここが、言語化できないとルール2以降の4つも成り立たなくなります。
ルール2.「共感」されるストーリーを伝える
クラウドファンディングは、「協力したい」「応援したい」という共感をベースに支援が集まる仕組みです。つまり、明確な目的に「共感」されることが成功の重要ルールなのです。
ここで、ルール1で設定した、プロジェクトのゴール像が重要になります。
なぜ必要なのか?どんな未来が待っているのか?ビジュアルや動画も使って伝えましょう。
支援者が共感し、自分ごととして積極的に参加したくなる。これがクラウドファンディングに成功する重要なルールなのです。
ルール3.支援への見返り(リターン)を工夫する
成功するルールとして、支援して良かったと思える見返りも欠かせません。
見返りには、商品やサービスといったモノでの返礼品と、精神的な満足感を得られる無形の返礼行為があります。
購入型クラウドファンディングでは、前者を、寄付型クラウドファンディングでは、後者を支援の見返りとして提供します。
教育関連でのクラウドファンディングでは、以下のような返礼が用意できるでしょう。
- 施設を利用する子どもたちからのお礼の手紙
- 活動報告会への招待
- 完成した成果物の共有
- 施設見学と体験会、各種行事への招待
- 記念碑への名前掲載
リターンについての詳しい説明は、以下の記事をご参考ください。


ルール4. SNSや地域媒体を活用する
クラウドファンディングの成功には、1人でも多くの人にクラウドファンディングを支援してもらう必要があります。そのためには、たくさんの人に知ってもらうよう告知活動をしっかりおこなことが欠かせません。
クラウドファンディングの告知には、デジタルとアナログの両方で行うことが重要です。
- PTAや保護者会の協力を得る
- プレスリリースで地元メディアにも情報提供
- Facebook や Instagram、X(旧Twitter)で進捗を発信
- YouTube や TikTok で動画による告知
- ポスター協力依頼やチラシの配布による案内
クラウドファンディングの支援者は、8割が関係者です。教育関連では、保護者や地域の人など直接関係のある人たちへの告知が最重要課題と言えるでしょう。
SNS や施設の公式ホームページや関連施設などのリンク先などで、クラウドファンディングのプロジェクトページを共有しましょう。
と同時に、公共施設や地域団体などに手紙や案内チラシなどを配り、活動への理解と協力を求めることも必要です。
ルール5. 目的に合うプラットフォーム選び
最後、5つ目のルールは、プラットフォーム選びです。
クラウドファンディングには、支援者との橋渡し役となるプラットフォームというインターネット上のサイトを利用します。
プラットフォームには、それぞれに成功しやすい分野があり、目的に合ったサイトを選ぶことも、成功するために欠かせないルールです。
教育・福祉関連では、「READYFOR」や「CAMPFIRE」を利用することをおすすめします。
READY FOR は、寄付型&購入型の両方を実行できるプラットフォームとして実績があります。継続して支援を受け取る月額制プロジェクトの実施もできます。

CAMPFIRE は、国内最大の購入型プラットフォームで、知名度がとても高いです。会員数400万人以上なので注目されると一気に支援数が増加します。
どんなプロジェクトでも対応できるサポート体制のため、初めてのクラウドファンディングには適しています。

研究分野では、academist という学術専門のプラットフォームもあります。

教育関連クラウドファンディング よくある質問Q&A
教育関連プロジェクトでの質問を中心に、よくある質問にお答えしていきます。
Q. 公立学校や施設でも実施できますか?
A. 公立学校でクラウドファンディングを実施した事例は、いくつかあります。公益財団法人が実行したプロジェクトもあります。
各自治体の方針によって、実施できるできないの判断が異なります。実行者が、職員か保護者か生徒かによっても、変わってきます。生徒が実行する場合は、保護者の許可があれば可能です
実際の事例がありますが、教育委員会への相談や承認が必要な場合があるので、関係各所への確認の上で実行に移してください。
Q. 失敗したらどうなる?
A.クラウドファンディングの失敗とは、目指していたゴールを実現できなかったという状態を指します。なので、目標額未達であっても、失敗したとは言えません。
「All or Nothing」形式では目標金額に達しなければ不成立ですが、「All in」形式を選べば集まった分だけ活用できます。
お金が集まらないことが失敗ではなく、少額でも集まったお金でどう取り組むか。その姿勢がクラウドファンディングでは重要です。
失敗が不安な場合は、以下の記事を読んでいただくと、クラウドファンディングをする意味合いが変わってくると思います。

Q. リターン(返礼品)は必須?
A. 寄付型でのクラウドファンディング実行なら、リターン不要な場合もあります。ただし、支援してもらったことに対しての感謝を伝える活動報告や感謝の手紙などは必ず行いましょう。
寄付型クラウドファンディングの詳しい解説は、以下よりご確認ください。

Q. 法律や税金は大丈夫?
A.クラウドファンディングでは、支援を募集する前にプラットフォーム運営会社による審査が必ず入ります。 法律上、募集が認められない点があると判断されると掲載許可が降りず、実行できない場合もあります。
法律上、気になる項目がある場合は、直接各プラットフォームへ問い合わせてみてください。
税金に関しては、プラットフォームのサポートを受けつつ、税理士に確認すると安心です。寄付金控除が可能なケースもあります。
税金に関する詳しい解説や、トラブルにならないための予備知識をそれぞれ記事にまとめていますので、そちらもご参考ください。


まとめ クラウドファンディングで教育・福祉の可能性は広がる
クラウドファンディングは、子どもたちの学びや成長を支えるための教育福祉の現場の可能性を広げる手段です。
教育現場をもっと充実し、子どもたちの学びを支えるためにクラウドファンディングは大いに活用できます。
地域や社会とつながりながら、体験学習の機会として活用することで、資金面や社会構造上これまで諦めていたことにもチャレンジできる時代です。
「こんなこと、できたらいいな…」と思ったら、ぜひ一歩踏み出してみませんか?
教育や福祉を充実し、子どもたちの未来を支える挑戦を、ぜひクラウドファンディングで実行してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
教育関連のクラウドファンディング挑戦は、スバキリ商店へ
スバキリ商店では、今回紹介した成功事例以外にも、多数の教育関連プロジェクトをプロデュースしています。
教育・福祉分野のクラウドファンディング立ち上げサポートなら、ぜひお任せください。
2024年末には、累計サポート件数1300件を超え、電子書籍も出版しました。
現在も累計件数は1400件以上となり、豊富な実績からそれぞれの目的に応じて、専門スタッフを中心に的確なプロデュースを行っています。
まずは、毎月1回無料開催しているセミナーへご参加ください。3月は、クラウドファンディングとInstagram集客についても学べる1度で2度美味しいチャンスです。

セミナー内でのクイズに全問正解すると、なんと1万円相当の特典あり‼︎
参加された皆さまには、もれなく書籍などの参加者プレゼントをご用意しております。
詳しいご質問やご相談は、LINE または、セミナー申し込み専用フォームからどうぞ!
