ひとつのことを”きっかけ”に、自分の夢を”つないで”いく

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何かことを起こすとき、そのきっかけが、「偶然」だったり、「たまたま」といったこともきっとあるだろう。

すべてのものが、熱い思いを持って始まるものばかりではない。

「たまたま」始まったものを続けていくうちに、自分がやっていることへの意義とか方向性がなんとなく見えてくることもある。

手探りでもそれが続いていけば、いつか自分にとっての「本物」となりうることだってある。いやむしろ、手探りをすればするほど自分のものになっていくのかもしれない。

Monaminさんにとって、スムージーがまさにそれだ。

Monaminさんは、いま地元でカフェを手伝い、スバキリ一味ではリターンや申請を担当といった仕事をしながら、2018年に立ち上げた自らのお店、cafeRelier(カフェ・ルリエ)を営んでいる。

「といっても、まだ自身のお店は持っていません(笑)。地元のカフェでバイトしながら、知り合いのお店の間借りや、イベントやマルシェなどでの出店が中心で、月1〜2回といったペースで活動しています」

小さな活動かもしれないけど、そこにはMonaminさんならではの「こだわり」が愛情のようにしっかりと注ぎ込まれている。

2022年3月27日 スバキリ商店法人記念イベントで出店した cafeRelir。この日、すべてのスムージーが完売した。

飲食業の接客が好き

Monaminさんは、和歌山県出身。高校卒業まで地元で過ごし、大学は大阪、そして卒業後に愛知県名古屋市へと移り住む。就職先が名古屋に本拠地を持つ飲食業の企業だったこともあり、初めての配属先は名古屋市内の店舗だった。

「入社したときと、退職したときとで、会社が変わったんですよね」

入社して2年ほどしたとき、勤めていた会社が経営不振となり、経営権と社員含め他企業に買収された。

仕事の内容についてある程度は変わるものとは思っていたが、お店のメニュー変更が 、”いま来てくれているお客様がみんな離れていってしまう”、と感じてしまうような内容だった。変更など内容も内容だが、いきなり方針を変えた買収企業の姿勢にも違和感を覚えるようになっていった。

そこに、さらに追い打ちがかかる。

なじんでいた名古屋の店舗から、1カ月以内に大阪南部の店舗へ異動する辞令がでたのだ。

いったんは辞令通りに異動はしたものの、その店舗は自分の肌質にあう環境ではなかった。仕事の変更内容、そんな内容に変えた会社に対する違和感、経営回復にも時間がかかりそうに感じられたことから、そろそろ辞めどきかなと思うようになった。

「でも、大阪に移って、ひとつだけとてもいいことがあったんですよね」

そのときのネガティブな気持ちを救い、いやされる出来事があったという。

異動した大阪のお店に、名古屋時代の常連さんがわざわざ訪ねきてくれたのだ。

「このときは、ほんっとうに嬉しくて! 接客ってやっぱりいいよなぁ、名古屋で頑張った甲斐があったよなぁ、とつくづく感じました」

しんどいことも多いけれど、接客という仕事の楽しさ、やりがいを感じた瞬間だった。何よりもこの仕事がやはり一番好きなんだ、ということを再確認しながら、Monaminさんはその会社を後にした。

2016年のことだった。

たまたまだったんですー(笑)

会社を辞めてしばらくは、大学時代によくしていたイベントスタッフのアルバイトなどで生活をつないだ。そして、この頃から自分でカフェをやってみたい、という思いが強くなっていった。

高校時代、カフェ巡りが好きだった。巡っているうちに、いつかは自分も、という思いを募らせていた。その思いが、ここにきてくすぶり出してきた。

そんな思いでいたなか、ひとつのチャンスに出会う。

ある日、「やりたいことがある人、タダで場所を貸しますので、なんかしませんか?」というTwitterが目に飛びこんできたのだ。

発信は、大阪平野区にある「入船温泉」という銭湯の店主からのものだった。

「“カフェをやりたいと思っているのですが、お風呂上がりにドリンクを提供させてもらったりできませんか?” って即座にリプしました」

「むっちゃいいじゃないですか!!」と店長からの反応が返ってきた。

入船温泉とは、クラウドファンディングでコミュニティスペースを創った大阪市平野区にある銭湯

この入船温泉でのイベントを”きっかけ”に、”スムージー=Monamin”のイメージが広がる

わずかながらでも自分の思うこと、感じることを大切にして即座に行動に移すと、その思いをさらに育ませるような動きへと進んでいく。

そこから入船温泉の店主と詳しい打ち合わせへと進み、さらに話が盛り上がっていく。やがては、「“ドリンク選手権”をやりましょう!」となり、Monaminさん以外のカフェ店も参加することになっていった。

集まったのは、Monaminさん含めて4店舗。そのうち3店舗は、コーヒー、ミルクティー、炭酸飲料をそれぞれ専門に提供している店舗を持っている人たち。Monaminさんが被らずに提供できるドリンクメニューはジュースぐらい、となってしまったが、自分でできることの全てを注ぎ込んだ。

「そのまま普通にジュースを出しても面白くないので、和歌山のフルーツを使ったスムージーを出そう、ということにしたんです」

これが、スムージーを手がけるきっかけとなった。

また、このイベントでMonaminさんはある人物とも出会う。

のちにスバキリ一味というクリエイター集団を率いて、クラウドファンディング・プロデューサーとして名を馳せることになる小西光治さんだ。

スバキリこと小西さんと

このとき、小西さんは切り絵作家としての活動中心でありながら、「お金の料理教室」を主催するなど、コミュニティ運営も手がけはじめていた。

ここでの出会いがご縁となり「お金の料理教室」が開催されるときには、Monaminさんがその受付を手伝いながらスムージーを提供する、という場が生まれていく。

こうした流れから、いつしか「スムージーといえばMonaminさん」というイメージも定着していった。

「何か熱い思いが最初にあってスムージーを手がけた、というような格好いいものではないんですよね。本当に“たまたま”だったんですよ〜」とちょっと控えめに笑うMonaminさん。

でも、そのたまたまが、今もこうして続いている。

これは「たまたま」だけの勢いでは続くものではないだろう。そこにちゃんとした思いがあるからこそ、続いていくのではないだろうか。

実際、その通りだった。

お客さんの喜ぶ顔が見たいから

和歌山といえば「みかん」…… だけではありません!

和歌山といえば、日本でも有数な「みかん」の産地だ。

実際に、地元の人たちは、みかんをお店で買うことはない、といわれるぐらい。地元農家さんから規格外のものをもらったりすることが常らしい。

そして、和歌山を産地とする果物は、みかんだけではない。梅、桃、いちご、そして最近ではキウイ、と非常に幅が広い。

「みかん、桃、といった果物は、本当にお店で買うことってまずないですね。大概近所の農家さんからもらうんですよ。表面にキズがあったり、規格外だったりするものがどっさりあって、それが近所に出まわるっていう感じです(笑)」

フルーツ好きの方には、なんともたまらない環境だ。

「だから、多すぎて、食べきれず腐らせてしまう、といったこともあるんです」

売り物にならないものは、身内や親しい人で消費するが、それでも間に合わないこともある。腐らせてしまう、行き先がなくなり捨てられるといった、いわゆる「フードロス」という問題も一方では潜んでいた。

「でもね、スムージーにしたら、表面のキズだとか、規格外って関係ないじゃないですか。だって、みんなミキサーで砕いてしまいますから」

たしかにその通りだ!

ここに気がついたMonaminさんは、それ以来、スムージーの原料となる果実を、J Aなどでいわゆる規格外やB級品といったものを中心に買い取るようになる。作り手からすればこれほどありがたいことはないだろう。

あるときには、農家さんを“ナンパ”したこともある、という。

「ちょっと大きめのイベントに出る機会があったんです。そのとき果実を大量に仕入れなくてはならなくて……。いつものJ Aの仕入れでは足りなかったので、キズものや規格外品を売ってもらえるよう直接農家さんに掛け合ったんです」

知り合いとかの農家ではない。縁もゆかりもない農家さんを訪れ、事情を説明したというからなんとも驚くべき行動力だ。

「事情説明したら、どうせ捨てるものだから、といって全部タダでくれました(笑)。このときばかりは本当に嬉しくて、とてもありがたかったです」

地元農家さんにしてみても、ただ捨てることを思えば、育んだ果実を使ってもらって生かされることのほうがやはり嬉しいのではないだろうか。

「少しでも和歌山の自然のめぐみを味わってもらいたい」

地元農家さんの思いを、スムージーを通して外の世界につないでいきたい、というMonaminさんの強い思いが感じられるエピソードだ。

だから、Monaminさんのスムージーは、砂糖を一切使わない

「果物の自然の甘さを味わってほしいので、砂糖は絶対に使いません。必要な水分は、組み合わせを楽しんでもらえるように豆乳とか紅茶とかといった飲料を使います。味が薄くなるので水はできる限り使いません」

あくまでも素材そのものをすべて生かしていく。

スムージーのメニューは、こうした飲料、材料となる果物の組み合わせをほぼその場で考え、自分のイメージで組み立てる。

イベントで出店に合わせて旬の材料を直前に仕入れ、メニューは出店準備中に決め込んでいく。

「やはり旬の果実を提供したいから、そのイベントが行われるタイミングで新鮮に仕入れられるものを原料として選びます。だから、事前にメニューを作れないんですよね」

Monaminさんのスムージーのメニューは、いつも開店前にその場で組み立てられる。まさに、その瞬間にしか味わえない貴重な逸品でもある。

その季節の味覚を一人でも多くの人に味わってもらいたい、という思いとともに、仕入れた旬の果実、ミキサー、調理器具のすべてを車に積み込み、イベント会場に駆けつける。

Monaminさんのこうした思いがあるから、旬の自然な果実を味わう、というなんともぜいたくな時間を過ごすことができるのだ。

大切にしたいのは、「つながり」

Monaminさんがここまでスムージーにこだわり手をかけるのも、飲む人たちの笑顔が見たいから。

「飲食の接客ってやっぱり大好きなんですよね。いいも悪いもその場で反応が出る」

立ちっぱなしの接客対応、多くの人たちが途切れなくお店に訪れてきたら食事もできないときもある。結局、それも含めて「楽しい」と思ってしまうから接客がやめられない、と笑うMonaminさん。

学生の頃に憧れていたカフェへの思いは、見た目や雰囲気だけの憧れだけではない。自らが提供するもので気持ちがいやされ、喜んでもらいたい、そうやって人とつながっていきたいという思いが言葉の端々に感じられる。

スムージーというひとつの飲み物をとってみても、その思いから踏み出されている行動には、地元農家さんとのつながり、フードロスへの問題解決といったところまでのつながりもしっかりと見えてくる。

きっかけは、たまたまかもしれない。

でも、そのきっかけから、大切にしたいものへの思いが紡ぎ合わさっているのがMonaminさんのスムージーだ。

スムージーを通して、農家さんが手塩にかけて一生懸命育てられた果実が、捨てられることなく人々の喜びへとつながっていく。

cafeRelir

Relirとは、フランス語で「つながり」を意味する。

2、3年以内に自分のお店を構えることを目標にしているMonaminさん。その実現に向けていまがんばっている。手伝っているカフェも、実はオープニングスタッフの頃からの付き合い。これも自分の店を構えることを考えての行動だ。

少しずつ、着実に自分の思いを実現しつつあるMonaminさん。

cafeRelirが実際のお店となっても、訪れてきた人たちにいろいろな喜びをつなげていくことは間違いないだろう。

それが、Monaminさんにとっての何よりの喜びだから。

取材・執筆:白銀肇

―ちょっとだけ、こぼれ話―
マルシェ系などのイベントでcafeRelirを出店するとき、ときどき缶ビールやワインを持ちこんで「これに合うスムージー作って!」というリクエストされるお客さんもいらっしゃるそうです(笑)。

そんな突拍子もないリクエストも楽しみながら、お客さんが持ち込んだお酒にあったスムージーをその場で作って提供されるそう。

もちろん、お客さんは大喜び!

「ワインやビールなどそれぞれのお酒の種類に、しっくりとマッチする組み合わせがちゃんとあるんですよ」

その言葉に、プロフェッショナルな対応を感じます。

ーcafeRelir 今後の出店予定ー
5月28日:大阪心斎橋にあるチキン南蛮店”MAGARINARI”さんで出店
6月18日:京都市伏見区醍醐にてプラスホームさんが主催する”プラスなマルシェ”で出店
7月3日:同上の”MAGARINARI”さんが主催する「鶏肉万博」で出店

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