生きがいは、ゼロから”事業”を創りあげること

メンバー紹介
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磯貝謙介さん。

スバキリ一味では、サムネイルを担当するデザイナーさんだ。

きっと、メンバーの誰もが磯貝さんをデザイナー、もしくはそういった分野に近い人、と思っているのではないだろうか。

ところがどっこい。

磯貝さんのお話を聞けば聞くほど、デザイナーという職業のイメージから、どんどんかけ離れていく。

あれ? 磯貝さんって、一体何者なんだ??

結論から言おう。

磯貝さんは、デザイナーさんではない。

起業家であり事業家だ。

事業を起こすときのその着眼点、発想、進め方は、聞いたことがないようなことばかり。

これまでの磯貝さんのお話を聞くごとに、

「ただ者ではない」

「策士」

そんな言葉が頭に浮かび、感嘆と敬意の感情とともについ口からこぼれる。

聞けば聞くほどにのめり込んでいってしまう、あまりに面白く発想豊かだけど綿密に設計された『磯貝ビジネス論』。

「ビジネスチャンスは、日常のあらゆるところに散りばめられている」

そんなことを私たちに気づかせてくれるようだった。

狙いどころをはずさない戦略

磯貝さんは、京都生まれの京都育ち。いまも京都市上賀茂という京都市内でも少し落ち着いた雰囲気のある街に暮らしている。

同志社大学を卒業後、広告代理店に勤務、その後ミュージックプランという会社に転職し、それ以降は、カフェ、レンタルサイクルと様々な事業を立ち上げてきた経歴をもつ。

現在は、スバキリ一味の仕事以外に、ミュージックプランという会社でお葬式の音楽の生演奏を手配するというサービスに携わりつつ、「Sunny Morning」というグラノーラを販売するECサイトを運営している。

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「ミュージックプランという会社は、両親がやっているんですよ。もともとは音楽学校だったのですが、学校事業よりお葬式のサービスのほうが忙しくなって、今はこれがメイン事業となっています(笑)」

このサービスは、故人の思い出の曲をプロの演奏家がお葬式の場で直接奏でるというもの。家族のメモリアルの部分に直接触れる、とてもニッチなサービスだ。そのせいもあって、コロナ禍に関係なく需要は堅持に伸びているという。

このミュージックプランに、磯貝さんは2012年に広告代理店を辞めて移る。そして同年に結婚し、1年後にカフェ「Apprivoiser」をオープンした。

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カフェ「Apprivoiser」の前で、isokakaさんと。

「もともと母親が、マクロビとかの料理を学んでいて、それをメインとしたカフェをやりたがっていたんですよ。そこに料理が得意な妻が入ってきて、カフェの経営が実現したんです」

磯貝さんの妻である”isokaka”さん(インスタネーム)は、お母さんがパティシエ、叔父さんがイタリアンシェフと親族に料理人がそろい、ご自身も料理教室をやっていたという。そんな”isokaka”さんの料理スキルが、カフェをやりたいという磯貝さんのお母さんの想いに見事にハマった。

「こうした流れがあったので、カフェ「Apprivoiser」がミュージックプランの一事業として立ち上がり、妻が店長となりました。僕は下っ端です(笑)」

ところがこのカフェ、オープンしてからまったく流行らなかった。お客さんが入らず早々に危機的状況に直面する。

店長である妻とカフェで取り扱うメニューの方向性をどうするか話し合いの日々が続く。この結果、メニューをベジタリアン、ヴィーガンといった方向に集中させていくことを二人で決めた。

ただ、これだけにとどまらなかった。磯貝さんご夫婦は、さらにもう一歩踏み込んだ。

それは、カフェの営業時間。

カフェといえば、やはりランチのイメージだろう。しかし、磯貝さんは、あえてそこを外し”朝食”に目を向け、昼からだったカフェの営業開始時間を、朝7時からの営業へと変えた。

この狙いは「インバウンド」。

ちょうどこのとき、京都は観光都市として外国人の人気がうなぎのぼりとなり、外国人観光客が急増したタイミングでもあった。そこを見逃さずに、磯貝さんは客層のターゲットを外国人観光客へと絞り切ったのだ。

カフェの場所は、四条河原町という京都市内でも有数の繁華街である場所から、少し南に下がったところにあった。その周辺は、インバウンド需要を狙って、小さなホテルや民泊がここぞとばかりに立ち上がったエリアでもあった。

「日本人と違って、外国人は朝食をしっかり食べる習慣もあるし、ベジタリアンやヴィーガンを求める人も多い。そういった朝食メニューの需要はきっとあるだろうと思ったんです。だから、野菜を豊富にしたメニューを取りそろえ、さらにドリンクのバリエーションも増やしました。ドリンクは利益率が高いので、それが当たると利益も上がるだろう、と踏んだんです」

この戦略は、見事に的中した。

本格的な朝食にターゲットを絞ってメニューを取り揃えたカフェというのは、当時この付近にはなかった。方向性を変えてから、お客さんがまったく入らなかったカフェは外国人観光客で朝から溢れかえるようになり、カフェ「Apprivoiser」は「朝食なら京都で一番」という口コミが広がるまでとなった。

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健康的な朝食を求めて、店内は常に外国人観光客であふれた。

「お客さんの95%が外国人でしたね。朝食も好評でしたし、ドリンクもたくさん飲んでくれて、1人で2人分の利益が上がっていましたよ。もう狙い通りでした(笑)」

しかし、2020年に入りこの勢いにストップがかかった。

新型コロナウィルス感染症だ。

今まで右肩上がりで進んできたカフェの売上は急減した。客層を外国人としていただけにそのインパクトは大きかった。

なんとかしばらく続けていたが、2021年12月12日にカフェ「Apprivoiser」は、8年間の幕を閉じた。

しかし、これだけで終わらせなかった。

「コロナ禍で閉店」という誰がみてもネガティブな状況を、逆に利用して次の事業へと結びつけていったのだ。

クラウドファンディングをバトンに新しい事業へ

磯貝さんは、カフェ「Apprivoiser」の閉店日だった12月12日にクラウドファンディング・プロジェクトを公開した。

プロジェクトの内容は、「コロナで閉店する店の最高の朝ごはんを残したい」。

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このプロジェクトが、いま運営しているECによるグラノーラ販売事業につながっている。というか、つなげた。

京都で人気だった朝食メニューを全国の人にも食べ続けることができるように、というストーリーでクラウドファンディングを展開した。

また、それだけではない。

実はこのプロジェクト、公開期間がたったの2週間だったのだ。にもかかわらず、目標金額20万円に対して86万円の支援金を集め、達成率430%という大成功を収めている。

「閉店に向けて『100日後に閉まるカフェ』とタイトルをつけてInstagramでカウントダウン投稿をしました。もちろん、クラウドファンディングのことも併せて配信しました」

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京都で一番といわれた朝食は、全国でも食べられるように引き継がれた。

当時のお二人のInstagramフォロワーは、およそ3,000から4,000人ほど。このフォロワーも、誰彼構わずフォローバックして増やしたのではなく、自分たちのファンとなってくれているような人たちによるフォロワーさんだ、という磯貝さん。

そういったフォロワーさんに向けて、カフェやクラウドファンディングに意識が向くような話題性のあることをInstagramで告知したり、店に来られたお客さまに直接告知したりと地道に活動を続けた。それが、短期でのクラウドファンディング達成と、現在の事業となっているグラノーラEC販売「Sunny Morning」へと結びついている。

ビジネスの動線があらかじめきちんと設計されているところに、磯貝さんの凄みを感じてしまう。

それは、カフェ以外の事業展開にも垣間見える。

磯貝流起業論 〜実践編〜

カフェ「Apprivoiser」が、グラノーラ販売「Sunny Morning」へと移りゆく間に磯貝さんは、

・民泊施設「Airbnb」
・レンタルサイクル「Sunny Cycle」

という2つの事業を立ち上げている。いずれも、カフェと同じようにインバウンド需要を狙ったものだ。

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カフェの朝食と同様、外国人観光客に大好評となったレンタルサイクル「Sunny Cycle」。

レンタルサイクルの事業は、カフェの営業活動としてレンタルサイクル店にチラシを配りに行ったとき思いついた。このとき店主やお店の様子を見て ”いまからやってもこれは儲かるかも” と思ったことがきっかけだった。

「だって日中から店主がひまそうにしているんですよ。チラシを配りにいったらいつも世間話に付き合わされて。こっちは次があるのに……。と思ったとき、ふと気がついたんです。”この人たち、こんなに時間持て余しているのになんで営業を続けていられるんだ?”って。それってしっかりと儲かっているからできることやんな、って思ったんです」

この瞬間から、カフェのチラシを配りが、新事業へのリサーチへと目的が変わった。自分がふと思ったこと、ハッと気がついた感覚の裏付けを取るため、チラシを手にしてあらゆるレンタルサイクル店に出向いた。

日中における店主の過ごし方、貸し出している自転車の稼働率、自転車の仕入れ値とレンタル料、店舗物件の相場、競合エリアの状況……。売上と利益につながる要素を素早く調べ上げていく。

案の定、磯貝さんが思った通りだった。

「レンタルサイクルは事業になる」と判断した磯貝さんは、すぐ実行に移る。他店舗の場所を確認し競合するエリアの隙間を調査し、自らの店舗にふさわしいエリアを割り出す。そこが見つかると今度は知り合いの不動産屋さんに連絡、物件情報を確認。手頃な物件を見つけると、すぐにそこを押さえた。

こうして、レンタルサイクル「Sunny Cycle」が立ちがった。

まさに電光石火の動き。

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外国人観光客と花火を楽しむ「Sunny Tour」。

さりげなく流れている日常のなかで、ふとした違和感や直感を覚えたとき、その感覚を無視しない。そこを起点にとことん考え抜き、必要な裏付けを取り、腑に落ちたらすぐに実行に移す。ここに磯貝流の起業ポイントがありそうだ。

「事業になるかならないのか、という計算がすぐに働いちゃうんですよ(笑)。そうやってあれこれ考えるのが本当に好きだし、楽しいんですよ」

だから、次は何ができるだろうかってことをついつい考えてしまう、と屈託なく笑う。

起業や事業運営というのは、磯貝さんにとってもはや「仕事」「ビジネス」というより、完全に「ライフワーク」という領域に入っているようだ。

結果として、「Sunny Cycle」もインバウンド需要を狙った事業であったことから、残念ながらカフェと同様に撤退を余儀なくされてしまう。しかし、そこに変な悲壮感は感じられない。身を引くべきときは、被害を最小限に抑えるため、妙な未練に引きずられることなくとっとと引く。事業を運営するうえでの磯貝さんの信念を感じる。

事業そのものをゼロからクリエイトする

磯貝さんがスバキリ一味のメンバーとなるきっかけとなったのは、同じ一味のメンバーである野間志保(のましほ)さんのご縁と、”YouTube”だった。

磯貝さんと、のましほさんは、あるオンラインサロンで知り合った。その、のましほさんが、あるときスバキリ一味のサムネイルを担当するデザイナーをTwitterで募集した。これに手をあげた。

これまで様々な事業を立ち上げてきている磯貝さんだが、実は料理を専門としているYouTubeチャンネルも持っており、企画、撮影、サムネイル制作を全て一人でこなしている。

「スバキリ一味というのもなんか面白そうだったし、サムネイルだったら自分のチャンネルで制作していたので、これだったらできるかも、と思って手を挙げました(笑)」

ここまできたら、もうお分かりだろう。

磯貝さんは、スバキリ一味では「サムネイル担当デザイナー」という位置付けだが、デザインを生業としている人ではない。本当の姿は起業家であり事業家なのだ。しかも、ことあるごとに「次は何を事業にしようか」という思考を常にはたらかせている人なのだ。

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子どもさんの七五三にて。お子さんの着替え待ち中にちょっとふざけて撮影。

ちなみに、いまは「何かしらのアプリを開発したい」と思っている。

「とはいってもプログラミングとか全然知りません(笑)。でも、WebやSNSなど今の世の中っていろんな情報源があるから、それを調べれば、”なんでもできるな” とも思っています」

その一方では、「何もできない自分がいる」ということも自覚している、という磯貝さん。

何か特別なスキルを持っているわけでもないし、何か秀でたものがあるわけではないから基本的には何もできない。しかし、自分が何もできないからこそ「どうやったらできるのか」という視点を崩さずに自分が納得いくまで調べ上げ、足を運ぶという行動につながっている。

「今回、成功した事業のことをお話ししていますけど、失敗も結構していますよ(笑)」

常に成功体験ばかり、だけではない。思いつき、動いたけど、結果としては思い通りにいかないことだってあった。

トライ&エラー。

これは別に起業やビジネスに限ったことではない。人生においてすべて共通していることではないだろうか。エラーの時点で活動を止めてしまうと、単なる「失敗」に終わる。でも続けていれば、失敗にはならないし、何かしらの成功につながるチャンスも広がり続ける。

「もし、何かの事業に失敗して借金2億円とかになったとしても、それはそれでしばらく話題にできるし、笑い話として使えると思いませんか??(笑)」

磯貝さんは豪快に笑った。

クラウドファンディングをプロデュースする「クリエイター」集団スバキリ一味。
2022年8月現在、所属しているクリエイターは50名を超え、そこそこに個性派が揃っている。

そして、そのなかには、まったくゼロから事業そのものすべてを創りあげてしまうという、とてつもない馬力を持った”事業クリエイター”も潜んでいた。

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敏腕事業クリエイターは、とても家族思い。
クセになる面白さが詰まったInstagramに、家族への想いと磯貝さんのセンスがあふれている。

Another Story 〜やはりただ者ではない〜

自身のYouTubeチャンネルを持っている磯貝さん。今回の取材で、記事にそのURLを貼ることを提案させていただのだが、丁重にお断りされた。

「URLをむやみに拡散されると、かえってクリック率が下がってしまって検索順位が下がっていくんですよ」

だから、YouTube URLは本当に常にみてくれる人にしか教えないようにしている、という。

クリック率とは「クリック数÷表示回数」で示される。

「たとえば、芸人チャンネルをよく見る人が僕のチャンネルを登録していたとしましょう。そうすると、その人の表示画面に僕の動画が上がる機会は増えますよね。でも、その人は僕のチャンネルに対する熱量はおそらく低いので(芸人好きだから)、僕の動画をクリックする確率は低い。クリックされる確率が低いところにただ表示されるだけというのは、分母ばかりが増えてかえって効率が悪いんです」

ご夫婦のInstagramフォロワーも、この考えで増やしていった。だからフォロワーの方々は、純粋にお二人のファン。クリック率は高く、反応する率も高い。だから、たった2週間で86万円という支援金も集まったのだろう。

SNS=拡散、図式を単純にイメージしてしまうが、それだけではなく、ちゃんとみてもらえる人のところに届くようにしていく必要がある、と語る磯貝さん。

ただむやみに量を追いかけるのではない。

きちんと本質を見極めて物事を設計する。

周りの状況に振り回されることなく、自分で腑に落としたことをしっかりと貫こうとする軸がはっきりと伝わってくる。

やはり、ただ者ではない。

取材・執筆:白銀肇

<磯貝さんInstagram>
お子さまである3兄弟のことを発信。よくぞこのタイミングを捉えたものだ、という画像が並んでいます。クスッと笑ってしまったら最後、沼のようにハマります。

https://www.instagram.com/kai_sunny1212/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D

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<isokakaさんInstagram>
京都朝食部門レストランランキング1位受賞したカフェのシェフによるヴィーガン料理の数々。初めての方でもヴィーガン料理が楽しめるレシピが満載です。

https://www.instagram.com/isokaka.kyoto/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D

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