スバキリ一味でフォロー担当を務める櫻井絵美子さんの本業は、カラー診断や骨格診断、洋服のスタイリングなどを行う「パーソナルスタイリスト」だ。
「ファッション関係の仕事をしている人」と聞くと、近づきがたいオーラーや気後れしてしまう雰囲気を想像するのは、私だけではないと思う。しかし、櫻井さんからは、そうした「威圧感」のようなものを微塵も感じない。オシャレで洗練されていて、素敵なのは間違いないのだけれど、さっとかけ寄っていってすぐに友だちになりたくなるような、「親しみやすさ」も兼ね備えている。
そんな櫻井さんの魅力の秘密を探るべく、いろいろな質問をぶつけてみた。
一から学んで始めたファッションの仕事
栃木県宇都宮市在住の櫻井さん。結婚と同時に仕事を退職して移り住み、長男を妊娠してからはアルバイトも辞めて専業主婦になった。ファッションの仕事を始めたのは、今から4年前だ。
「次男が幼稚園に入園して少し時間ができたので、興味のあったファッション関係の勉強をしたいと思って、カラー診断や骨格診断などについて学べる講座に通い始めました」
なぜ「ファッション」だったんですか? と聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「ストレングスファインダーや性格診断などで内面の特性を知るように、外見も自分らしさがわかって生かせるツールがあったらいいのに、と漠然と思っていたんです。それに、知人女性の魅力をもっと引き出したいと思う出来事も重なりました。
それで、調べてみたら、カラー診断や骨格診断といったぴったりの内容があって。栃木ですぐ受けられる講座をみつけて学んだ後、都内で資格も取って自宅でサロンを開きました」
結婚前の仕事はファッションと無縁だったというから、一から学んで今の仕事を始めたことになる。昔から洋服は好きだったそうだが、どちらかというと「自分を知るツール」の一部として、ファッションに関心があった。
ファッションは「内面の一番外側」
一般的に「ファッション」というと、どうしても「着飾る」「コンプレックスを隠す」など、「自分を(本物より)よく見せるためのもの」と考えてしまいがちだ。
でも、櫻井さんに話を聞いていると、全く違った側面が見えてくる。
「ファッションって、“内面の一番外側”なんです。だから、自分の気持ちとファッションが一致していると、ラクに気持ちよく生きられる。
でも、やさしい雰囲気が魅力なのにバリバリのビジネススーツで固めていたり、本当は明るく活発的なのに、服になると無難なものしか選ばなかったり。そこにギャップが生まれてしまうと、その人の魅力がストレートに伝わらず、人間関係や仕事がうまくいきにくくなったり、ストレスを抱えてしまったりすることもあります」
「私たちの仕事は、カラーや骨格診断というツールを使って『分析』しながら、その人の魅力を最大限引き出し、なりたい姿を具体化していくこと。『体型が変わってしまって着る服がない』という人もいますし、お悩みは人それぞれですが、その人が自分らしく輝くための提案をして、お悩みを解消するのが役割だと思っています」
自分の内側をありのままに表現するのが「ファッション」であり、その手助けをするのが櫻井さんの仕事なのだ。
「地味な仕事」に必死で取り組む
華やかなイメージがあるファッションの仕事だが、櫻井さんは現実をこう話す。
「似合うスタイルを提案するには、カラーや骨格の知識だけでなく、洋服や靴、アクセサリーまで、今どんなものが市場にあるのか把握しないといけなくて。ショッピング同行をする場合なんかは、前もっていろいろな店を下見してリサーチするのが必須なので、もう脚がパンパンになります(笑) 実は、根性が必要なすごく地味な仕事なんです」
「でも、準備し始めると『あの人には絶対この服似合うよな』とかスイッチが入っちゃうんですよね。カラーや骨格診断中も、『何を着ても似合わない』というお客様に、『こういう雰囲気はどうですか? こっちの方がいいですか?』とか一生懸命質問して、頭をフル回転させながら、『だったらこうすると素敵ですよ』って提案するんです。
そうすると、『えっ私こんなの似合うんだ!うれしい』という反応が返ってきたりして。そういうときはものすごくうれしくて、『よし!』ってなります。だから、気がつくとめちゃくちゃ真剣になっていますし、アドレナリンも出てます(笑)」
目の前のお客様のために、全身全霊で集中する櫻井さん。上から目線で「こうやったらオシャレになれる」とアドバイスするスタイリストではなく、「魅力を最大限引き出したい」と必死に汗をかいくれる。そんな彼女だからこそ、多くの人が依頼したいと思うのだろう。
櫻井さんの持つ「親近感」の理由が、少しわかった気がした。
人の役に立つ仕事なら、どんな仕事でもいい
結婚、出産で仕事を辞め、そこから新しく「好き」を仕事にしている櫻井さん。ファッション関係の仕事に強いこだわりがあるのかと思いきや、さらっとこんなことも口にする。
「いや〜、別に『絶対ファッションの仕事じゃなきゃ! 』みたいな気持ちはないですね。人の役に立てれば、ツールは何でもいいのかなぁと。パーソナルスタイリストには、『服が好きで好きで仕方ない』みたいなタイプもいるけれど、私の洋服に対する情熱はそこまでじゃない(笑)」
「『悩んでいる人の力になりたい』というのが一番のモチベーションですね。目の前の人の悩みが解消されて笑顔がみえると、すごくやりがいを感じます。だから、10年後は全然ちがう仕事をしているかもしれない。怪しい占い師とか(笑)」
イタズラっぽく笑う櫻井さんを見て、「なんて自由な人だろう」と驚いてしまった。櫻井さんには、「ファッションが大事」とか「オシャレをした方が楽しい」とか、ともすると「価値観の押しつけ」になってしまうようなところが一切ない。あくまでファッションで悩んでいる人の力になりたいだけ、という想いが伝わってくる。
モチベーションを引き出す、感覚的なコミュニケーション
櫻井さんがスバキリ一味に参加したのは昨年7月。クラウドファンディングを公開したクライアントをサポートする「フォロー担当」として活躍している。
ファッションスタイリストとは全く異なる仕事に思えるが、参加したきっかけは何だったのだろうか?
「小西さんの『ビジネスコミュニティ』で、営業を募集していたですよね。営業は時間的に難しいかな、と考えていたら、クライアントさんのサポート担当も探していると聞いて、やってみようと思いました。基本的に『面白そうなこと』が大好きなので(笑) 実際いろいろなクライアントさんの活動を知ることができて、とっても興味深いです。みなさん本当にすごい! 」
楽しそうに話しながら、櫻井さんはこう続ける。
「フォローの仕事は、クライアントさんに合ったコミュニケーションが大切だと思っています。同じことを伝えても、言い方次第でモチベーションが上がりも下がりもしますよね。その感覚って個人個人違うから、その人に響く言葉を選ぶように心がけています。でも、お会いしたことのない方とのやり取りなので、なかなか難しいところではあるのですが」
結婚前にしていた仕事との共通があり、その経験が生かせる部分もあるというが、常にクライアントさんの様子を伺って、それぞれに合った方法で接していくとなると、ものすごく大変に思える。気を遣いすぎてストレスフルになることはないのだろうか?
「いや〜、そこは感覚的にやっているので、別に苦になったりはしませんね。時には、『あっ、この言葉じゃなかったかも……』と反省することもありますが、チームのみんなに支えられてなんとかできています」
感覚で個々に合わせたサポートできるなんて、なんと貴重な才能だろうか!
でも、その「自然体」のコミュニケーションこそが、押しつけがましい雰囲気を作らず、まっすぐに相手に伝わる秘訣なのかもしれない。
「絶妙のバランス感覚」が魅力となって
「不思議なバランス感覚」が備わっている。それが櫻井さんの根底にある魅力だと感じる。
ファッションの仕事をしているけれど、「オシャレ」を押しつけない。仕事に情熱をもって取り組んでいても、必要以上に固執しない。さらには、自然体で人のモチベーションをスッと引き出してしまう。
その絶妙なバランス感覚はどこからくるのだろう? どうやって身につけたのだろう? と疑問に思っていたら、こんなエピソードを教えてくれた。
「今は結構自由に考えられるようになりましたけど、20代の頃は必死でしたよ。新卒で入った会社は実はブラック企業で、1年もしないで辞めました。その後何回か転職も経験していますし、当時は20代で結婚しないと『負け組』なんて言われていたので、結婚を焦った時期もありました」
「だけど、29歳で無事結婚したのに、しばらくしたら急に体調を崩しちゃったんです。突然苦しくり、息ができなくなって。今振り返れば、環境が大きく変わり友だちもいないなか、家事もちゃんとやらなきゃとか、自分自身にプレッシャーをかけてたんですよね。
その時『アファメーション※』を始めて、それから随分楽に生きられるようになりました。本を読んだり調べたりして出合った、『どんな生き方も“すべてが正解”』という考え方にも支えられて、セラピストのディプロマ(終了証明書)も取得しました。
自分が選択したことなら、専業主婦で仕事をしなくても、頑張ってバリバリ働いても、どちらも正解。だから、無理に今の状況にあらがわずに、自然体で生きていけばいいかなって思っています」
※アファメーション:ポジティブな言葉を自分自身に宣言することで、理想の状態を実現する手法
自身に起こることを受け止め、様々な想いと向き合い、自分なりの答えを見つけてきた櫻井さん。これまでの経験や時間、考えたことが積み重なり、「自分もまわりも縛らない、型にはめない」独自のスタイルができたのだろう。それが魅力となって、彼女にしかない雰囲気を醸し出している。
「年々自由になっている」と語る櫻井さんが、数年後はどんな「面白い」ことを始めてしているか、期待せずにはいられない。
きっと何をしていても、自由に「その時」を楽しんでいるに違いない。そんな櫻井さんの姿が目に浮かぶ。
櫻井さんのパーソナルスタイリングHPはこちら↓↓↓
取材・文 川崎ちづる