1月よりスタートしました、新企画『対談!スバキリ一味』。
チャレンジする人を応援するアーティスト集団「スバキリ一味」の“中の人たち”50人超のなかから、毎回テーマに合わせた2人で対談を繰り広げます。
第3回の今回は、プロジェクトオーナーとリターンなどを決める打ち合わせを行い、チームメンバーをまとめて全体的な進捗管理を担当する「ディレクター」であるお二人、ちびぃさんこと山下美樹さんと、くりまゆさんこと栗林麻由子さんによる対談。テーマは「成功するプロジェクトとは」です。
ちびぃさんは、スバキリ商店代表の小西さんとは、まだ小西さんが切り絵作家(すばらしい切り絵作家)と名乗っていた頃からの長い付き合い。スバキリ一味がまだクラウドファンディングをプロデュースする前から、メンバーに名を連ねていました。
そして対談相手のくりまゆさんは、ライターとしてスバキリ一味に途中参加してから、持ち前の向上心でめきめきと仕事の幅を広げていった方です。
プロジェクトの管理者として、またチームメンバーのまとめ役として、そしてわが道を行く小西社長と現場との調整役として、多忙な毎日を送られているお二人に、「ディレクターから見るクラウドファンディング」についてたっぷりと語っていただきました。
理想的なプロジェクトから学ぶこと
聞き手:今日は、たくさんの案件を進捗管理されてきたお二人の対談から、どんなプロジェクトが成功しやすいのか、というヒントが見えればなぁという希望を持って、大きなテーマを設定させてもらいました。
さっそくいいですか?それで言うと、今日(1/24)スタートのプロジェクト、めちゃめちゃ理想的なスタートを切れたのがありましたよ!「クレアウィンボックス」のプロジェクト。
スタートから半日で230万とか、スバキリ一味プロデュースの案件では最速じゃないですかね?
わ、もうそんないった?すご!!
正直、ここまでとは想像していませんでしたが(笑)、告知がすごくうまくいっているんですよね。
もともと、コロナに合わせてフィルターは開発して販売されていて、それを使ってこういう空気清浄機にするという案はどうだろう?というのをTwitterで発信してたんですよね。テスト品をつくったり、それを購入してもらった人もいたり……そこにクラウドファンディングを乗っけた感じです。
すでにSNSでファンを獲得できていたから、「とにかくお気に入り登録をしてもらってください」って伝えたら、スタート時に70以上お気に入り登録がされていました。前日にしっかりと明日スタートですというのも告知されたから、「待ってました!!」って、公開と同時に支援がバンバン入ってきたんです。
支援した人が拡散してくれるし、それをきっちりクライアントもリツイートしてる。プロジェクトオーナーさんがちゃんと動いて、自分たちにできることを地道に全部やっている、お手本みたいな案件です。
ほんと……プロジェクトオーナーさんが告知をしてくれてはじめて、クラウドファンディングとして機能する、ということがほとんどなんですよね。
事前準備が不十分なまま、終わりの日程優先で公開してしまった場合は、うまく周りを巻き込めず、支援につながらないことが多いですね。
リターンに関しても、メインターゲットに向けたものしかないと、知り合いの人が支援したいと思っても、買うものがない……となってしまうよね。
自分が何を売りたいか、ももちろん大切なんだけど、お知り合いならどんなリターンがあれば喜んでくれるか、という視点はめちゃめちゃ大切ですよね。
どこまで譲れるか、じゃないけど……商品開発ってそういうものじゃないですか?
それで言うと、「クラウドファンディングは公開すれば寄付してもらえるんでしょ?」という勘違いをされている方は一定数いて、その誤解を解くのには結構労力がいりますよね。全然知らない人の企業スポンサー10万円を買おう、なんて思う人はまずいない。
私は、ちなみに今まで誰かの支援をされたご経験は?と聞きますね。お知り合いのプロジェクトや、全く知らない人のプロジェクト……それらを見て「ポチっとしたくなるか」という自分の心を見てください、その気持ちは、ご自分のプロジェクトを他の方が見たときの反応とイコールなんですよ、というのは伝え続けないとな、と思っています。
告知に関して言えば……天下のコカ・コーラでさえも、アサヒビールもキリンビールも広告を打ってる!その代わりのプロジェクトオーナーさんからの告知なのだから、告知しないで支援が入るはずがないんです!
1回言ったからもういいでしょ、的なスタンスだとよくないですよね。その1回を全員が聞いているわけないんだから……。
とにかく言い続ける、ができる人は、自分の思いを届けたい!って本気で思ってる人だと思う。
支援者側の立場に立って自分のプロジェクトを見ることができて、告知し続けることができれば、成功しますよね。
思いを届けられるかどうか
聞き手:「思いをいかに届けるか」がポイントになってくるんですね?
プロジェクトオーナーさんの熱量が伝わって、本気度が伝わったら、「すごい熱量やからしゃぁないなぁ」って思わず支援しちゃうことってありますよね。
失礼ながら、その商品がすごく受容性があるものでなかったとしても、頑張って伝え続けている姿を見ると、応援したくなりますよね。
本文とか、リターンとか、すごく読み込んで「もっとこうしたほうがいいかも!」とたくさんリクエストをくださるプロジェクトオーナーさんは、本気やな、すごい熱量やなぁ、ってのがすごい伝わる。こちらの作業量は増えるけど(笑)、気がつけば引き込まれて、普通以上に応援していますね。
あとは、こっちからアドバイスしたこと―活動報告してね、とか、SNSで告知してね、とかをきっちりやってくれてると、本気で取り組んでくれてるんだな、って感じますよね。
いつ公開ですか?次、何をしたらいいですか?教えて~!!って早い段階から質問をたくさんしてくる方って、もう早く表にこれを出したい!っていう熱量があふれてるよね。
逆に、こちらからの連絡に何週間も返事がない方は……これ公開してもうまくいかないよな、という感じがしちゃう。
スバキリ一味は「クラウドファンディングを丸投げ」をうたっているから、手軽にできる感覚が大きすぎると、うまくいかないですね。丸投げしてもらって、確かにページは完成するけれども、その先はやはりプロジェクトオーナーさんのがんばりが必須。
クラウドファンディングをやる方の大半は、資金集めを目的にしているのだから、融資や補助金並みの労力がかかるのは当然で、その熱量をここにかけないでどうするの~!?って言いたくなりますね。
印象に残っているプロジェクト
聞き手:ご自身で担当されたプロジェクトで、特に印象に残っているものがあったら教えてください。
私はやっぱり『応援アワード』かなぁ!
これ、私ディレクターじゃなくて、リターン担当だけのはずだったのに、プロジェクトオーナーのクミッチェルの熱量が半端なくて(笑)、気がついたらどっぷり対応してました。
Zoomで打ち合わせしてたら、「こんなに応援してくださって……」って、感極まって泣き出すんやもん(笑)。
毎日ライブ配信してたからね……なかなかできるもんじゃないよね。
この人たちとはプロジェクトが終わってもつながっていたいな、と思ったんですよね。私自身、あそこまで熱量を持ったことがないから、自分の人生の参考になりそうって思った。
私は『トキのコトヅテ』ですね。
プロジェクトオーナーの磯野さんは、こちらから提案したことを「分かりました!!」って即行動に移してくれて。告知もすごい頑張ってたし、SNSだけじゃなくて、実際自分の足で回ってる人だったと思う。
自分がリアルにこのテントに行ってみたい!磯野さんが目指してる世界に触れてみたい!!って思いましたもんね。
現在進行形のだったら、福井のご当地ヒーロー、頑張ってるよね。
1日何回ツイートしてるんやろう?(笑)自分ができることを全部やる!っていう熱量がすごくて、応援したくなる。
ニットセットアップのプロジェクトもすごかったですね。
これはリターンをあれこれ悩んだけど……プロジェクトオーナーさんがすでにSNS上にファンを獲得していて、そこで発信し続けたのがうまくいった例だと思う。
このプロジェクトは、自分たちが成功したいという思いがすごく強くて、この商品をどんな人に届けたいかが明確だったよね。
プロジェクトオーナーさんの得意分野が組み合わさると、支援がばんと伸びますよね。いくらフォロワーさんが1万人いても、そのニーズにあわない限りは、支援にはつながらないですよね。
プロジェクトオーナーの立場になってみて思うこと
聞き手:ちびぃさんはご自身がプロジェクトオーナーとなってクラウドファンディングも経験されていますが、そこから感じたことはありますか?
痛感したのは、かっこつけたり、パフォーマンスしたりはいらないということですね。素直に、本心から応援してほしいって言えば、伝わって応援してもらえると感じました。あとは、実際に行動に移せるかどうか……。
私はがむしゃらに動くしかできないけれど、いっしょにやったよらさんは、感情を出すのが苦手。でも、それならそれで、ライブ配信や動画や文章でちゃんと表現してた。自分のできるかたちでいいから行動に移すって大切!!
泥臭いのが大事なんだよね…たぶん。
最初はDM送るのも、ウザがられたらやだな~叩かれたら怖いな~って思ったけど。自分が逆の立場だったら、ウザかったらスルーするだけやし、思うようにやってみよう、って吹っ切れたんですよね。
かっこつけたり、うまいことやろうとしているのが見えちゃうと、ひいちゃうかも。
大半の人は、お金が欲しくてクラウドファンディングをやってる。自分がやったから言えるけど、もうその時点で十分みっともないから!(笑)
商品買ってください、って文章に書いてるのに、あと一言が言えない人が多いよね。プライドが高いとしんどいと思う。
「意識は高く、腰は低く」て言うよね。自分がいいと思っていることに対して、誇りを持つことは大切だけど、変なプライドは見栄になってしまうよね。
自分ができないことを認めている人は、私は応援しちゃう。この人のためにできることがあればしてあげたい、って思うんだよね。
そうそう、自分だったらどんな人を応援したくなる?って逆の立場に立って考えることも大切だよね。自分はみんなの目にどう映ってる?と俯瞰してみることが必要!
ビジネス的にも、プロジェクトを俯瞰して見ないといけませんよね。妄想の世界のまま進もうとされると、厳しいです……。
ターゲットをどのあたりまで広げるとか、どんなリターンがあるとその人たちは喜ぶとか、どれくらい資金が必要かとか……カジュアルな事業計画書を書くつもりで、クラウドファンディングを設計していく必要があると思うんですよね。面倒だけど、どうなりたいかというのを踏まえたうえで、俯瞰しないと。
なぜか、未知の世界に対するすごい信頼感のようなものを持ってる方もなかにはいらっしゃいますね。いい事してるから、寄付して貰えるに違いない、根拠はないけど、クラウドファンディングをしたら、今まで興味がなかった人も支援してくれるはずだ、みたいな。
ないないない(笑)。本当にこれは人に受けるのか、とか、自分を疑っていくことは必要だよね。
キャンプファイヤーのページを開いて、今いったい何件のプロジェクトが公開されていて、自分のカテゴリに絞っても、どれくらいのが公開されているかを見たら、ただ公開するだけで、勝手に支援されるわけない、って思うよね。
支援を寄付や援助と混同している人もいるかな、と感じています。
こないだ打ち合わせをした若者が、「甘く見てました、ちゃんと人脈を作ってから出直します」って言って帰っていったな。でも、そういう判断ができることも賢明だと思う。
ディレクターとして心がけていること
聞き手:お二人は、ディレクターとして、案件の方向性を定めることと、チームメンバーをまとめることをされていますが、日ごろ心がけていることはありますか?
メンバーにも、クライアントに対しても、「ゆるくいる」ことかなぁ。余裕を持つというか、いっぱいいっぱいにならないというか。急な出来事にも対応できる状態でいようと思ってます。
あとは、元の性分もあるけど、全体の状況を把握しておきたいというのはあるな。姑みたいに(笑)。でもそうしてるから、もしくりまゆさん倒れても、私替わりにディレクターとして入れる自信があるよ(笑)。
私は自分のチームしか見れてません(笑)。クライアントからもし過度な要望があったら、そこからメンバーを守るのは私の仕事だと思ってます。
スバキリさんは、何かあったら僕が責任を持つ、って言って私たちを好きにさせてくれているから、その一歩手前の責任は私が持って、チームメンバーにはやりたいようにやってほしいなぁって思ってる。
でもスバキリさんと違うところもあって。スバキリさんは「いいですねー!面白いですねー!」しか言わないけど、私は現場を見る立場として、厳しいことも言うようにしています。そうじゃないと、本当の意味でのチームメンバーにはなれないと思うから。
私も、プロジェクトオーナーさんに対して、おせっかいめでいるようにしています。限られた時間であっても、チームメンバーとして活動していくために、言いたいことは言うし、アドバイスもできる限りはしようと思っています。
今は、ひとりで何でもやる時代じゃないから、仲間を募って、得意なこと同士を掛け合わせていくというスタイルに、このクラウドファンディングはとても合っていますよね。
そうそう、クラウドファンディングがなかったら、本気でやりたいのに、お金がないからという理由で諦めてきたことがいっぱいあると思う。そういう意味では、挑戦のハードルを下げるものだよね。だから、いろいろな人がクラウドファンディングに挑戦してくれたらいいと思う……ただし、本気の人に限る、だけどね(笑)。
まとめ
・プロジェクトを成功に導くのは、プロジェクトオーナーの熱意!変なプライドを捨てて、自分にできることは全部やる!のスタンスだと成功する
・ただし、プロジェクトを「俯瞰して見る」こともとても大切
・大手メーカーでさえも、莫大な費用をかけて広告を打っている。クラウドファンディングでは、広告の代わりになるのは自らの告知!告知なしに支援は見込めない!
・ディレクターは、クライアントのチームの一員としてプロジェクトを成功に導くために、クライアントに対しても、厳しいことも言わせていただきます……
・何かあったら責任を取る!と言ってくれるディレクター陣、そして小西社長がいるので、メンバーはのびのびと自分の実力を思う存分発揮して仕事をしましょう!
◆イラスト―やましゅう
◆取材・執筆―石原智子