クラウドファンディングを実行する上で、成功を左右するのは支援の見返りとなるリターンです。
リターンの相場って幾ら?どんなリターンが人気なのか?プロジェクトのタイプによって相場を知ることで、プロジェクトの成功率が大きく変わります。
クラウドファンディングのリターンについて、価格帯の相場や成功事例のリターン具体例について解説していきます。
【基本】クラウドファンディングの最新リターン相場
2024年を振り返って、クラウドファンディング市場全体でのリターン相場はどうなっているでしょうか。
結論から発表すると、購入型クラウドファンディングと寄付型クラウドファンディングでは、以下のような傾向が見られます。
- 平均リターン価格:1万円台前半
- ボリュームゾーン:5,000~7,000円台の支援額が最多
- 支援者参加型&体験型リターンが増加傾向
- 社会貢献プロジェクトや地域活性プロジェクトへの支援が注目
この傾向を導き出した裏付けについては、後ほど詳しく解説します。
クラウドファンディングのタイプ別リターン相場
クラウドファンディングは、大きく3つのタイプに分けることができます。
購入型、寄付型、投資型の3タイプです。
各タイプ別でのリターンについて、おさらいしておきましょう。
購入型クラウドファンディングのリターン相場
購入型クラウドファンディングは、最もポピュラーなタイプです。「クラウドファンディングをする=購入型」というイメージを持つ人が多く、商品やサービスを先行販売する形でのリターンが支援の見返りとして行われます。
- 価格帯:1万円前後が主流
- 特徴:商品やサービスの提供価格に比例
- 主なプラットフォーム:CAMPFIRE、Makuake、Kibidango、MotionGallery、GREEN FUNDING など
プロジェクトの目的としては、新製品のテストマーケティングや先行販売、イベント開催、出版、新店舗の出店から改装など幅広い目的で実行されています。社会貢献プロジェクトも購入型で実施するケースが多いです。
リターンの具体例としては、次のような形が多いです。
- オリジナルTシャツ(3,000円〜5,000円)
- 地域特産品セット(5,000円〜8,000円)
- 新商品の先行販売(8,000円〜12,000円)
ポイントは、通常の販売価格よりも少し安く設定するか、s支援者限定特典を付けることです。支援者に「お得感」「特別感」「限定感」を感じてもらうことが重要です。
寄付型クラウドファンディングのリターン相場
寄付型クラウドファンディングは、社会貢献や文化支援などを目的としたプロジェクトが多く見られます。2024年正月に発生した能登半島地震でも、多くの支援プロジェクトが寄付型クラウドファンディングで実行されました。
若い世代には、購入型クラウドファンディングよりも、社会貢献に参加できるという点から寄付型クラウドファンディングへの共感が高いというデータもあります。
- 価格帯:1,000円〜3,000円の少額と10万円以上の高額に二極化
- 特徴:継続的な支援へとつながるケースもある、活動目的への強い共感を得ることが重要
- 主なプラットフォーム:ReadyFor、For Good、CAMPFIREForSocialGood、Syncable など
プロジェクトの目的は、医療支援や福祉活動、子育て支援、地域活性など社会問題を解決する内容が大半です。
個人から非営利活動団体まで、単発の支援だけでなく月額支援を受けられる仕組みを提供するプラットフォームもあります。
寄付型クラウドファンディングは、リターンなしのクラウドファンディングとも言われます。リターンの具体例は、以下の形式が多いです。
- 支援へのお礼メッセージ(1,000円)
- 活動報告書(3,000~5,000円)
- 体験イベントや施設見学への招待(5,000~10,000円)
- 支援者の名前を刻んだスポンサー名掲載権(3万~10万円)
寄付型の場合、金銭的リターンよりも「参加感」や「達成感」を重視する傾向があります。企業からの寄付として、5万円以上の高額な支援が行われることもあります。
寄付型クラウドファンディングについての詳しい解説記事もありますので、そちらも併せてご覧ください。
投資型クラウドファンディングのリターン相場
投資型クラウドファンディングは、金銭や金融商品をリターンとするクラウドファンディング全般を指します。不動産投資や株式投資、融資など、企業へ向けた事業資金調達に使われることが多いです。
- 価格帯:1口10万円以上が多い
- 特徴:取り扱うリターンの種類によって、投資額や支援への見返りに大きな差が生じる
- 主なプラットフォーム:COZUCHI、CROWDBANK、FUNDINNO、イークラウド など
投資型クラウドファンディングのリターンは、以下のタイプに分けられます。
- 非公開株式(10万円/口)
- 社債(50万円/口)
- ファンド型(100万円/口)
- 家賃収入(1万円~/口)
- 物件売却益(変動制)
金銭的なリターン以外にも、投資した企業から優待特典や優待サービスが返礼品として用意されるケースもあります。投資型クラウドファンディングは法規制も厳しい分野でもあり、実行する場合は専門家に相談しながら進めるのが賢明です。
投資型クラウドファンディングに関する詳しい情報は、以下よりご確認ください。
プラットフォームの統計データから見えるリターンの現実
プロジェクトを掲載する各プラットフォームの実情から、クラウドファンディングのリターン相場について探っていきましょう。
CAMPFIRE 公式統計データと、主要プラットフォーム8社の2024年上半期実績から見える、リターンの実態について分析します。
CAMPFIRE の統計データ分析
CAMPFIREのデータによると、1万円以下の支援が支援件数全体の70%以上を占めています。しかし、支援総額から見ると、5,000円〜10,000円の価格帯と20,000~50,000円の価格帯がそれぞれ全体の約20%を占めており、この2つの価格帯が目標金額を達成する上で、リターン設計の重要なポイントになると考えられます。
その他の詳しい統計データは、以下よりご覧いただけます。
主要プラットフォーム8社の実績から見えるリターン相場
株式会社craco が2024年7月末に公開した、2024年上半期の主要プラットフォーム8社の実績データから、各プラットフォームの平均支援額などを見ていきましょう。
参考となったデータは、株式会社craco のプレスリリースから拝借しました。詳しい内容は以下よりご覧ください。
プレスリリース内に、統計データのダウンロードリンクも貼り付けられていますので、クラウドファンディングの実態を把握して、プロジェクト必勝策を練りたい人にはおススメです。
今回、注目したいのは、各社の平均支援額と支援が集まったジャンル別の実績です。
まずは、主要8社の上半期実績から見ていきましょう。
プロジェクト件数では、CAMPFIRE がダントツで6,839件、次いで Makuake が3,165件。支援総額と支援者数では、Makuake が81億2943万134円の675,431人でトップ、CAMPFIRE は65億5513万7641円の492,280人で次点。
CAMPFIRE と Makuake の2社だけで、約1万件のプロジェクトに約116万人から約146億円の支援が集まっているという状況です。平均支援額は、約12,600円。
プラットフォーム8社全体の平均支援額が14,117円なので、リターン相場は10,000円前後という認識で、価格帯を設計していくというのが基本セオリーで間違いないようです。
次に、プラットフォームとジャンルで見た実績ベスト10ですが、トップ5のうち2つが地域活性目的のプロジェクトであることは重要なポイントです。クラウドファンディングを活用して、地元の魅力を伝えたいという挑戦が行われ、そこに対して多くの共感と支援が集まっているという成功事例が多く成立しているということがうかがえます。
また、このランキングでは、ReadyFor が社会貢献プロジェクトや地域活性プロジェクトでの強い実績を持つことも数値化されています。モノづくりやファッション系プロダクトのプロジェクトは「応援購入」を掲げる Makuake 、飲食店プロジェクトは CAMPFIRE での実行が適していると言えるでしょう。
全体としては、モノづくり系、地域活性、飲食店とフードという3つのカテゴリーが、クラウドファンディングの目的として活用されているし、支援を集めることが出来ている。2024年上半期のクラウドファンディング市場全体での傾向は、そのように分析できます。
成功するクラウドファンディング リターン設計のポイント
クラウドファンディング市場の現状を知ったうえで、成功するクラウドファンディングでのリターン設計で押さえるべきポイントを3つ、確認しておきましょう。
- 支援したくなる魅力的な見返りを用意
- 価格帯は2ライン以上準備
- 原価から逆算した価格設定
支援したくなる魅力的なリターン内容とは
リターン設計で一番重要なのは、支援したくなる魅力的な内容のリターンを用意することです。購入型クラウドファンディングを実行する場合、商品やサービスをリターンとして提供するケースが多いです。
クラウドファンディングを支援しないと手に入らない限定品、支援者しか参加できない特別イベント、シリアルナンバーや支援者名をスポンサー表記するなど、一般販売では手に入らない特別なリターンを用意することは簡単にできます。
自分のプロジェクトに共感する人は、どんな見返りがあると嬉しいのか。リターンを設計するときは、支援者目線で「特別感」「限定品」というキーワードで、商品やサービスに付加価値をつけられるか研究しましょう。
複数の価格帯を用意する
目標金額を達成するには、複数の価格帯でリターン設計を行うことが重要です。リターンの相場は1万円前後、しかし、目標金額を50万円、100万円と設定するなら、1万円だと100人以上から支援してもらう必要があります。
リターンは500円から設定が出来ます。ただし、プラットフォームへの手数料やリターンを準備する経費などから逆算すると、1,000円から支援できるお気持ち枠、ボリュームゾーンとなる5,000~8,000円台、30,000円~50,000円の高額リターン、10万円以上の特別枠という3段階から5段階で幅広い支援者に対応しましょう。
原価と経費を考慮した価格設定
リターンに、物品やサービスを用意する場合、原価計算を必ず行いましょう。利益が出ない価格設定では、プロジェクト自体が赤字となり、実行することが出来なくなってしまいます。
仕入れ原価、製作にかかる費用、そして忘れてはならないのが、運送費です。リターン品を用意して、支援者へ手渡すまでにかかる全ての費用を計算し、それにプラットフォームの手数料を上乗せした金額を元に、各リターンの価格設定を行いましょう。
リターン設計全体については、こちらの記事をご参考ください。
リターンの価格設定に関するバランスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
リターンを実施する上でのTODOチェックリスト付の実施マニュアル記事もございます。
成功したプロジェクトのおすすめリターン事例
スバキリ商店のプロデュースした成功プロジェクトから、ボリュームゾーンで支援者数が多いリターン例をいくつか紹介いたします。
世界に1つだけのオリジナル手書き扇子のリターン
クラウドファンディング限定品として人気なのは、世界に1つしかないオリジナルアイテムのリターン。オリジナルアイテムは1万円以下の価格帯で、プロジェクトに関連したオリジナルTシャツやステッカーなどがよくある例です。でも、ぶっちゃけ、もっと「特別感」や「唯一無二感」があったら、支援したくなりませんか?
スバキリ商店のサポートスタッフ、通称「スバキリ一味」でプロジェクトのディレクターを務める書道家、蘭鳳さんのプロジェクトでは、世界に1つだけのオリジナル手書き扇子をリターンとして用意しました。
当初30点限定のリターンでしたが、人気のため価格を上乗せして追加。1種類のリターンで37万円もの支援を集める人気リターンとなりました。
このように、支援者も参加できるオリジナルアイテムというリターンは、唯一無二の記念品となるため、支援したくなるリターンのお手本です。
支援者が参加できる体験型リターンのお手本事例
人気リターンのひとつに、参加型や体験型というタイプがあります。5,000円から1万円程度の価格帯で、ユニークな体験を提供するリターンです。
有名 YouTuber の出版プロジェクトでお手本としたい参加型体験リターン
人気 YouTuber であり、経営者としても有名なトゥモローゲート株式会社 代表の西崎康平さんは、さすが敏腕経営者と言えるリターン設計をされています。そのなかでも、ぜひ真似していただきたいお手本リターンがこちらです。
2,500円のリターンでも、100人集まれば、25万円。YouTube 配信には、通信費と撮影機材やスタッフなどの経費が掛かりますが、普段から配信しているので、実質、原価はほぼゼロ。このあたりの設計がさすがだと思います。
配信機材が無くても、Zoom などを活用すれば、支援者限定のライブ配信などが出来ます。
オンラインでのライブ配信は、実行者側としては原価を抑えられる点、支援者からも気軽に参加できる上に、限定感が得られるという点で、双方にメリットがあるリターンなのです。
少人数でも、どこからでも参加できる低価格帯でのオンライン参加型リターンは、今後ますます人気のリターンになると思われます。
貴重な体験は高額リターンとしても提供できる例
ちなみに、配信参加リターンを高額リターンとして提供した事例もあります。
こちらは、都内でゴミ拾い活動を行っている TicTok フォロワー数67万人の「ゴミ拾い侍」さんのリターンです。
世界中にフォロワーがいる TicTok に出演できる権利を手に入れられるのは、かなり貴重な体験です。西崎さんや「ゴミ拾い侍」さんのように、コアなファンがいる人は、特別な体験を提供しやすいと言えます。
一日スタッフを体験できるリターン例
その他にも、「お金を払って特別な体験ができる」というリターンでは、スタッフ体験などもあります。
こちらのプロジェクト実行者の今井さんは、YouTube「クラウドファンディングの虎」で別事業についてプレゼンをした流れで、スバキリ一味へプロジェクトのプロデュースをしていただいてます。
「クラウドファンディングで事業に対する世間の反応を確かめる」という代表 小西の提案の元で、姫路縁2号店プロジェクトとしてクラウドファンディングが実行されました。
プロジェクト自体は、リターンなしの支援が数多く集まったという、「ただただ非常に応援された」珍しいプロジェクトです。詳しくは、プロジェクトページの活動報告や、こちらのnote記事をご覧ください。
リターン相場やリターン設計でのよくある質問 Q&A
リターンに関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。
Q1: 最低価格はいくらから設定できますか?
A: 多くのプラットフォームでは500円から設定可能です。ただし、手数料や経費を考慮すると、1,000円以上がおすすめです。なぜなら500円のリターンに対して、プラットフォームの手数料が仮に20%差し引かれると、手元に入る支援金は400円です。ここから原価を引いて赤字になってしまうようでは、500円でリターンを提供する意味がなくなります。
ちなみに、今回紹介したトゥモローゲート(株)の西崎さんのリターンには、500円リターンがあります。この500円リターンもエンターテイメント性が非常に高い参加型リターンのお手本例です。詳しくは、プロジェクトページをご覧ください。
Q2: 高額リターンは必要ですか?
A:絶対必須とは言い切れませんが、他のリターンの価格帯とバランスを見て用意することをおススメします。なぜなら、高額リターンを1つ用意しておくことで、思いもよらず高額支援を獲得できることがあります。ただし、高額リターンの内容はプロジェクトの性質に合わせて、価値があると理解されるものを検討しましょう。
Q3: リターンの種類はいくつ用意すべきですか?
A: メインとなる価格帯のリターンは、3〜5種類が一般的です。今回の記事で紹介した CAMPFIRE の統計データでは、リターンが10個程度用意されたプロジェクトの目標達成率が高いという傾向もあるようです。同じ価格帯でリターンが多すぎると、逆に支援者が選びにくくなるので注意が必要です。
スバキリ商店でプロデュースする場合、実行者からリターンの候補を10~15個出していただいた中から、リターン設計のヒアリングとサポートを行います。
Q4: 実際の商品価格より安く設定してもいいですか?
A4: クラウドファンディング限定の特別価格として、通常より割引価格でリターン価格を設定するのは効果的です。ただし、手数料や送料を差し引いた上で、原価割れにならないよう注意しましょう。特に、原料の価格が変動する商品の場合は、予備費を原価に足しておくことも重要です。
テストマーケティングや商品のプロモーション目的でない場合は、割引よりも付加価値をつける方向でセット販売などもおススメです。
Q5: リターンの発送はいつまでに行う必要がありますか?
A5: プロジェクト終了後、半年以内が一般的です。ただし、商品開発などの場合は、1年以上かかることもあります。その場合は、支援者に進捗を細かく報告することが重要です。
また、予想以上に反響があったり、予期せぬ理由で制作やリターンの履行が遅れる場合もあります。リターンが遅れることが判明した時点で、支援者へ報告し、理由を説明しましょう。
まとめ クラウドファンディングのリターンは参加型低価格を押さえるべき
クラウドファンディングのリターンは、支援者が参加できる低価格帯を押さえるべきといえます。2024年上半期の傾向から、支援額の相場はやや低価格指向です。ここまで見てきたように、1万円前後がボリュームゾーンとなっていますが、景気の動向や若い世代からの支援を集めたいと考えるなら、プロジェクトの性質や目的に応じて適切な複数の価格体設定が必要です。
支援を気軽に行える環境づくりには、特別な体験ができるエンターテイメント性があることも支援のハードルを下げる可能性があります。また、クラウドファンディングを支援することでしか手に入らない限定品という部分も、モノづくりやファッションというジャンルでプロジェクトが支援される大きな要因です。
今回の記事があなたのプロジェクトにぴったりのリターン設計を行う参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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