柔道整復師からカメラマンへの転身!キャンピングカーでどこまでも

メンバー紹介

健康的に焼けた肌に、いかにも体育会系っぽい雰囲気。スバキリ一味の動画担当である今さんは、1ヶ月のうち10日ほどはキャンピングカーで全国各地を飛び回り、撮影・編集をこなす。15年の整骨院経営を経て、カメラマンに転身したという異色の経歴の持ち主だ。

整骨院を畳んだのは2022年3月だが、院を閉める前から始めていた映像の仕事は超多忙で、国内の某大手旅行会社との仕事も進みつつある。「映像を作ることがゴールではなく、お客さんのお困りごとを解消するのがゴール」だから、場合によってはチラシやYouTubeアカウントやLINE公式アカウントなど、映像以外も作るそうだ。

スバキリ一味ではオプションの「動画制作」を請け負っていて、プロジェクトオーナーさんの思いや商品説明など、案件ごとに最適なPRを行う。

整骨院とカメラマンはどちらも「職人」のようなイメージがあって、全く別ベクトルの仕事に見える。しかし、今さんいわく「どちらも本質は同じ」なのだそうだ。いったいどういう意味なんだろうか?何をどうやったらそんなキャリアになるんだろう?

今さんのストーリーをじっくり聴いてみた。

 

「天職」だと思っていた柔道整復師

大阪で生まれ育った今さんは、体育大学を卒業してから3年間、整骨院で働きながら滋賀の柔道整復師の学校へ通った。技術を学び、国家資格を取得したこの3年間は、奥様との出会いも含めて「僕にとって濃い3年間だった」という。卒業後に大阪へ戻ってきた今さんは整骨院を開業し、柔道整復師として心血を注ぐことになる。

大学時代にアルバイト先での出会いを通じて「これが僕のやりたいことや!」と柔道整復師を目指すように

整骨院の仕事は「天職だと思っていた」ほど、今さんにピッタリだった。仕事は楽しかったし、開業前に抱いていた「庭つき一軒家に子どもが2人、犬を飼い、大好きなキャンピングカーを買う」という夢も叶えた。

「夢を叶えた瞬間に、人間ってパワーが弱まるんやと思うんですよね」

と振り返る今さん。やりがいのある仕事だったが、長年整骨院を続ける中で、自分の成長は少なくなっていった。「将来ずっとやっていける気がしないな」「天変地異級の何かがあれば、仕事を変えるのになぁ」という思いもどこかしらあったそうだ。

そんなことを思っていたら、世の中が文字通り一変する事件が起こった。新型コロナウイルス(以降、コロナ)の流行である。コロナが広がりだして真っ先に大打撃を受けた仕事は、飲食店やホテルなどの実店舗であろう。そのなかでもお客さんとの物理的な距離が近い整骨院では、当然のように客足は激減した。仕方がないとはいえ「僕は必要とされてないんやと思うのがツラかった」。

15年間も「天職だ」と思って打ち込んできた仕事に、お客さんが来ない。そうなると、長年続けてきた事業を復活させるべく「どうやったらまた来てもらえるんだろう」と考える人が多いのではないか。

ところが、今さんは時流を読み「これはチャンスだ!必要とされる場所に身を置こう」と院の事業を終えることを決心。コロナの影響で自宅で過ごす人は増えて、動画や映像の需要は高まっていたことも判断材料の一つだった。そして実は、飛び立つための準備もすでに整えつつあったのである。

 

キャンピングカーから紡いだ「繋がり」

今さんの人生を語るのに、キャンピングカーは外せない。昔からスキーやスノーボードが大好きで、学生時代は毎週大阪から長野まで車で往復していた。車中泊もしばしば。当時から「将来はキャンピングカーが欲しい」と思っていたそうだ。

今さんの相棒。子どもがそれぞれ2歳・5歳の時に購入した

新車でキャンピングカーを買う場合、まずは作ってくれる「ビルダー」を選ぶ必要がある。「家具の質感が良かったのと、社長さんが素敵だった」ことから選んだビルダーさんは、キャンピングカーを持つ人が集まるキャンプ会を年2回主催していた。このキャンプ会が、本当に楽しかった。

「『年に2回じゃ足りない。もっと会いたいよね』ということで、仲間内でユーザー主催のキャンプ会を企画することにしたんです」と楽しそうに今さんは言う。

最初は、家族が何組か集まるちょっとしたグループキャンプ。それが少しずつ規模が大きくなり、今ではなんと30台のキャンピングカーが集まるほどの大イベントに成長した。「今年の7月に行う河口湖のキャンプは、3日間で満員になりました」という人気っぷりから、かなり満足度の高いイベントなのが伺える。

今さんは、家族の成長記録を撮りたい、思い出を残したいという気持ちから、趣味でカメラを始めていた。このイベントの時にも毎回写真や動画を撮っていたそうだ。

凝り性なタイプで、趣味の時からこだわって撮影・編集をしていたそう

「笑顔を撮るのが好きだし、子どもたちが仲良くなってるのを見るのが好きで、心地よくて。ずっと続けていたんですよね」

息子さんと娘さん、そして愛犬も

自分の「楽しい」「好き」を追求していた今さんの動画は、キャンピングカーのある暮らしの魅力を存分に引き出していたのだろう。ある時、そのビルダーさんから「宣材用に動画を売ってくれないか?」と言われるようになった。今さんが撮影した動画はビルダーさんのYouTubeチャンネルにアップされ、それが後の師匠の目にも留まることとなる。

 

チャンスの女神の前髪をわし掴み

自分が「こうありたい」と願って歩みを止めなければ、行動している人の前にチャンスは転がってくるものではないか。それをつかめるかどうかは人それぞれだとしても。

「カメラの仕事をしてみたいなぁ」と思いながらも「カメラマンってどうやって食べてるんやろう?」「機材もどれが正解なんやろうか」と悩んでいた。

めちゃくちゃかっこいいやん!この人に教えてもらいたい!」と思っていたら、キャンプ会のイベントで会えるチャンスがやってきた

「初めまして!会いたかったです!」と挨拶したところ、師匠も今さんの映像を見ていて、存在を知っていたという。そればかりか「こっちの仕事、やりませんか?今さんが本気でこっちの道に来るんやったら、教えます」と声をかけてくれたそうだ。

この時、ちょうど整骨院の売上がグッと落ちてしまったタイミングだった。今さんの決断は早かった。1週間後には「これだけあったら仕事できるよ」と教えてもらった機材を100万円ほどかけて揃え「師匠!機材買ったんで教えてください!」と連絡。本格的にカメラマンとして働くことを決めたのだ。

「崖から飛び降りる前みたいな感じやったんですよね。そんな時に、最後に背中をちょいって押してもらえた感じでした」

今さんは、コツコツと行動を積み重ねていった結果、チャンス神様の前髪をガッチリと掴んだのである。お手本となる存在と出会えた今さんは、そこからは整骨院の仕事もしながら、カメラにマーケティング、ブランディング…師匠からひたすら必要なことを教わった。

「強く願望を持ってたら、必要なことがやってくるんですよね」と今さんが言うように、ありたい姿をイメージし続けることで、チャンスは引き寄せることができるのだろう。

Wワークはハードだったが、がむしゃらに成長し続けたおかげもあって、仕事はどんどん増えていった。そして2022年3月、15年続けた整骨院を閉じることを決めた。

 

整骨院もカメラマンも、本質は同じ

映像の仕事をしていて気づいたことがある。どちらも結局のところ「お困りごとを解決する仕事」だということだ。

整骨院なら「痛いところがあるけど、どうしたら良いかわからない」患者さんに対して、どこが痛いのかを聴き、治るまでのロードマップを描いて施術や日々の過ごし方をアドバイスする。映像であれば「伝えたいことがあるけれど、どうしたら良いかわからない」クライアントさんの代わりに、必要なことを整理して、伝えるための手伝いをする。目的は想いを伝えることだったり、採用だったり、商品のPRだったり、実に様々だ。

今さんが、どちらにも共通して大事にしているのは「徹底的なヒアリング」だ。クライアントの要望を丁寧に聞き出して、強みや特長などと一緒にシートにまとめてから提案をしていく。整骨院時代に会得していた、目の前の人と向き合うスキルが、今もバッチリ活きている。

 

スバキリ一味との出会い

スバキリ一味の団長、小西さんとはよらさんの繋がりからBNIで出会った。

「この人と繋がってたら、なんか仕事になるんじゃないかなぁ」とは思いつつ、すぐに一味の仕事の話になったわけではないそうだ。クラウドファンディングをやりそうな人を2,3人小西さんに紹介した後、黒門カルチャーファクトリーを訪れた際に「スバキリ動画パックを作りましょう!」となったのだという。この提案も、スバキリ一味の状況を丁寧に聞いた結果、出てきたものだ。

2023年3月ごろからスタートして、すでに動画が出来上がっているプロジェクトもある。

▼【一般社団法人 社会 】クラファン動画▼
https://youtu.be/Vw6lJofxVBY

ライター取材のタイミングで合えば同席し、合わなければクライアントと直接打ち合わせて、徹底的にヒアリングを行い何を撮るかを決めていく。プロジェクトごとにチームで動くスバキリ一味のなかでも別軸で動いているから、関わりがあるメンバーはまだ少ないかもしれないが、出来上がった動画を見せていただいて「これから今さんの動画は、一味のプロジェクトでもどんどん増えていくんだろうな」と感じた。

 

自分の夢も追いながら、次の世代へ

「自分が死んだ後に、残った人からどんなふうに言われたいか?」

という問いについて、考えたことはあるだろうか。この問いかけで分かるのは「あなたの本当の最終目標はなにか」だと言われている。

今さんの場合は
「今さんのお陰で人生が変わった、ありがとうって言われたい」。

「僕一人でできることって限界があるんですよね。僕が師匠に教えてもらって、一緒に仕事行けるようになったのも楽しかったし、そんな風になれたらな」

グループでキャンプイベントの主催も継続中

現在の仕事も楽しみながら、自分の持っているスキルをもって、人を育てていきたいそうだ。実は今も、小西さんから紹介された青年と一緒に動画を作っている最中。

将来的には、子どもが巣立ったあとは奥さんと2人になる。「大好きなキャンプや自動車関連のものを重点的に、全国各地をキャンピングカーで走り回りながら、のんびり仕事したいな」と語ってくれた。

仕事への情熱と、機材と、ワクワクを載せて。今さんは今日、キャンピングカーであなたの街を走っているかもしれない。

取材・執筆ー上原佳奈(かなっぺ)