これから求められる地域活動・コミュニティーとは?

メンバー対談

2023年1月よりスタートしました『対談!スバキリ一味』。
チャレンジする人を応援するアーティスト集団「スバキリ一味」の“中の人たち”50人超のなかから、毎回テーマに合わせた2人で対談を繰り広げます。

第6回の今回は、プロジェクトの本文の校正を担当する鎌苅さんと、リターン制作担当の小紫さんによる対談。テーマは「これから求められる地域活動・コミュニティーとは?」です。

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これまでの地域活動経験

聞き手:一口で「地域活動」といっても、色んな分野があると思います。お二人はこれまでどんな活動をしてきたのかお話しいただけますでしょうか?

兵庫県宝塚市の西谷地区という少子高齢化が進み、限界集落となりかけている地区があるんです。そこの任意団体宝塚にしたに里山ラボというところに参加し、地域活性化のための活動を5年ほどしてきました。日本の原風景があって、まさに「田舎」という所です。

宝塚にしたに里山ラボ │ 里山西谷の魅力を つたえる・つなげる・ひろがる
宝塚市西谷で親子中心のイベントを開催。自然に親しんだり食育や農業、伝統文化に触れたり、都会に近い自然あふれる西谷の魅力を再発見するプログラムを多数行っています。西谷地域の課題解決のために、子育て世代を中心に次の世代へ広がる活動を目指しています。

ここでイベントをしたり、豊かな野菜を使ったレシピノートを作るなどしてPRして来ました。

聞き手:兵庫県知事から「第21回人間まちづくり賞 まちづくり活動部門 知事賞」をいただいた活動ですよね。週刊スバキリ一味の記事を読ませていただきました。

宝塚市には「自然の家」があって、昨年に行政・地域とのミーティングを繰り返しながらリニューアルオープンをすることになりました。その際に「宝塚にしたに里山ラボ」も一般社団法人にしたんです。そこの施設長をさせていただいてます。
なので、ボランティアという地域活動ではなく「社会起業」になります。ビジネス戦略を持って「どう持続させていけるのか」を考えて活動しています。

私は、小紫さんがされている社会起業とは違って、息子の小学校PTAの執行部役員として3年間活動をしてきました。栃木県宇都宮市の新興住宅のエリアにある学校なので全校生徒は800人。

えー!すごく大きい学校ですね!

1学年5クラスありますから今の時代だと大きいですよね!
3年のうち2年間はコロナの影響でそれまでの運営方法の切り替えが必要でした。以前はPTA主催の文化祭を行ったり学校行事も盛んだったのですが、そうもいかなくなって。
PTAの活動の中で、学校の先生方や地域の民生委員さんやいろんな協議会との意見交換をおこなったり交流をしながら運営していました。

地域活動で得られた一番大きなもの

聞き手:限界集落での社会起業をされてる小紫さんと、都市部でビジネスではないPTAの活動をされてきた鎌苅さんのコントラストがすごいですね!お二人が地域での活動の中で得られた一番大きなものって何ですか?

「第3の場所でのつながり」です。
私の中でPTAは、家庭とか職場以外のサードプレイスでした。家と職場の往復だけの生活だと、それぞれの環境の中で「こうしなきゃ、ああしなきゃ」と枠の中に閉じこもることになる。それで視野が狭くなったり考えがガチガチになっちゃう。ビジネスじゃないPTAだからこそ、遊びや余裕が生まれるなぁと。
例えば、「学校の先生」って「上の存在」とか「偉い人」っていう思い込みを持っている人って少なくないんですよね。でも、学校には50人の先生方がいて、実際に話してみると、先生も「1人の人間」でした。上下関係じゃなくて役割が違うだけ。そういうフラットなつながりを持てたことは大きかったです。
あと、息子と同学年の保護者以外の保護者とのつながりも増えたのも良かったです。なぜかっていうと、中学校の入学前ってわからないことだらけだったんですけど、「何を準備しておけば良いのかな?」って聞ける知り合いがいるから。モヤモヤを1人で抱えなくて良くなって、精神的に余裕もできるんです。

わかるなぁ。「第3の居場所」の魅力って大きいですよね。家と職場だけだと出会える人って広がらないから。「地域」の中で活動すると、年齢はもちろん、違う立場の人と出会える。物事のとらえ方や考え方が凝り固まらないんですよね。
例えば、うちの「自然の家」の来場者って子育て世代の方が多いんです。その人たちは前提として「自然が好き」なので、その共通のテーマで違う家の人とも交流をされていますし、60〜70代のシニアのスタッフと雑談していたり。

聞き手:たしかに学校や職場でいきなり「私は自然が好きなんだ!!!」って話をし始めないですもんね(笑)

そうですね(笑)
共通のテーマがあって、いろんな人と出会える第3の居場所ってすごく重要だと思います。

地域活動を始めたキッカケ

聞き手:お二人のお話を聞いていると、「地域活動やった方が良いよね」って思うんですが、結構心理的なハードルってあると思うんです。地域活動をスタートした最初のキッカケってなんでしたか? この記事を読まれている方は「コミュニティ」とか「地域活動」に興味がある方だと思うので、お聞きしたいです。

えっと・・・息子がもうすぐ小学4年生にあがる前のある日のことでした。「PTAの執行役員になってもらえませんか」って勧誘の電話がかかってきたんです。誘ってもらってるし、「やっても良いかな」って、抵抗なく始めました。
「PTA会長になってください」ってわけじゃないし。一番上の立場に立って、スポットライトを浴びるのって勇気がいるでしょう? でも、スポットライトを当てる役は決死の覚悟とかいらないから。私はそういう役が好きなんで(笑)
あと、思い出したんですけど、母も小学校のPTAの役員をやってたんですよ。だから知り合いが多くて、私も同級生以外のお兄ちゃんやお姉ちゃんによく遊んでもらった記憶があります。母はPTAの運営をきっかけに何十年来のお友達もできてて、それを見ていたので「PTA=ポジティブな印象」だったのも大きかったと思います。

訪問マッサージの事業をして地域で仕事をしていたことが大きいですね。自分が住んでいる地域なら楽しかったり、豊かな方が良いじゃないですか?だから「やろう」って思いました。
あと、ぼくはあたらしい世界を知っていくのとか、人とコミュニケーションをとることが好きなんです。あまりにも大人数のイベントだと「どうしよう」ってなるけど、少人数のグループでお互いの気持ちや考えを話しあうことは楽しいし、好きです。

これから求められるコミュニティー

聞き手:ありがとうございます。今、先のことが予測できない「変化が激しい時代」と言われていますが、これからどんなコミュニティが求められると思いますか?

やっぱり、「ユルさ」が大事だと思います。
例えば、田舎と都会で比較して説明すると・・・田舎の村社会って狭いし、しがらみがあったり、ご近所付き合いがしんどいっていう面もあるけど、おじいちゃんおばあちゃんがいて地域みんなで子育てをしたり助け合うコミュニティーの面もありますよね。
でも一方、都会だと、住んでいる家の隣の人が誰だか知らない。つながりがないじゃないですか。そうなると、逆につながりを求めることになると思うんです。
こうした二極化が前提となっているので、リアル・オンライン問わず、程よくユルッとつながれるサードプレイスがいっぱいできていくんじゃないですかね。「ここにいしかいちゃいけない」ではなくて、1人で複数のコミュニティーに自発的に所属できる時代ですから。
うちの「自然の家」に来る人は、「いきなり移住しよう」とまでは思ってないんです。自然好きのユルいコミュニティーなので、すごく感じます。
あと、コロナ禍で人とのつながりが薄れてしまったので、「精神的なつながり」を大事にできるところ、居心地の良さはすごく大事そうですね。

私も、ユルさや柔軟さって重要だと思います。
「PTA活動」って聞くと、「仕事休めるかな・・・」「今までの役員の方達みたいにちゃんとできなかったらどうしよう」という負担が大きいイメージって大きいと思うんです。
でも、これだけいろんな働き方や生き方があって忙しい時代だから、会議や打ち合わせとか行事に毎回参加できるわけじゃない。なので、「こうしないとダメだよ!」という人が多いと、離脱する人が多くなっちゃう。
だから、「良い意味で、今までのやり方を引き継がない」っていことも大事だと思うんです。例えば、会議はZOOMやLINEのグループ通話でやるとか、オンラインやリモートで参加できるようにするって工夫がないと厳しい。やれる時に、やれる人が、やれることを。そうじゃないと続かない。今は、PTA業務を外部委託しているところもありますからね。
柔軟に、「これからはこう工夫していこうよ」っていう物事のとらえ方ができる人が多いと、居心地も良いし、前に進んでいきやすいでしょうね。メンバーの得意なことやできることで補い合っていくと、自然と出番と居場所も生まれていくから。

スバキリ一味もそうですよね。、小西さんってそういう感じ(笑)
自分にできないことはユルくメンバーに任せるっていう。

そうそう(笑)
スバキリ一味ってメンバーそれぞれがお互いに得意なことを知っているし、役割を分けているから。まさにそういう良い意味で良いコミュニティーだと思う!

今から地域活動を始めたい人へのメッセージ

聞き手:今から地域活動を始めたい人がいたらなんて声をかけますか?先ほども少しお聞きしましたが、新しいことを始める一歩目って、ハードルが高いと思うんですが。

地域活動を始める際って、「忙しくなる」とか「時間が奪われる」っていうイメージがあるかもしれませんよね。でも、「得られるもの」にも注目してもらいたいなって思います。活動に参加して知り合いが増えることで精神的な安定が得られるし、怖がらずに「えいっ!」て参加してもらえたら(笑)
息子とタケノコ堀りのイベントに行った時のこと。気がつくと、子ども同士で仲良くなっていて、切った竹で創作活動をしていました。子どもって簡単にコミュニティーが作れちゃうんですね。でも、大人になって家と職場の往復だけになっていると、新しい場所に飛び込むことや変化をしにくくなるかもしれないけど、きっとあなたに合うコミュニティーがあると思います。入ってみて違ったら辞めたら良いし(笑)「うわぁ!ここギスギスしてる!居心地悪い!違った!」って引き戻れば良いと思います。入ってみないとわからないから!(笑)

「社会起業」の場合も同じです。楽しそうならやる。楽しければ続ける。楽しい、楽しくないで判断して良いと思います。心の向くままにやってみてください。
「ちゃんとやる」ではなくて、「ユルくて良い」んです。
例えば、想いが強すぎる人が運営するコミュニティーだと、「こうしなきゃダメでしょ!」って人に強制しちゃう。それで周りがしんどくなったり、意見が合わなかったりってなるともったいないなって思います。
スバキリの小西さんって、「スバキリはチャレンジする人を応援するアーティスト集団」っていうふうにはあるけど、それをメンバーに強制しないじゃないですか?
逆に小西さんやスバキリのユルさが無理で「あ、違った」っていう人もいたかもしれないけど、それで良いと思います。今いるメンバーって、ユルさを持ちながらも自発的で責任感がある人ばかりだから。

そうですね!なんか小西さんの話に自然にいっちゃうけど納得!まさかこうなるなんて(笑)

お二人が今後やっていきたいこと

聞き手:難しいテーマでしたが、お二人のおかげで素敵な内容になりました。本当にありがとうございました(笑)最後に、今後お二人がやっていきたいことをお聞きしたいです!

実は今すごく気になっていることがあって、それは「自治会」の活動です!

PTAから、自治会!なるほどー!

自治会は、一番身近なコミュニティーの1つですからね!
まだやる前だからわからないけど、「秋に体育祭をしても人が集まらない」とか「ソフトボール大会をずっとやって来たけど来てもらえない」というように集客の悩みをよく聞くんです。
これも、「今までこうやっていたから変えられない」という思い込みかもしれないですよね。ゴミや清掃活動の話だと、生活に関わるものですごく大事だから引き続いて考えないといけないけど、「これって、工夫しなくて良いの?」っていうものに取り組んでいきたいですね。

ぼくは、西谷のコミュニティーで「多世代交流」を進めたいです。子どもは子どもだけで遊ぶとか、シニアはシニアだけで過ごすとかじゃなくて、子どもも保護者もシニアもみんなで一緒に交流することを進めたいんです。モルックを通じてなら、子どもからシニアまで体力差とか関係なく試合ができるのですごく良いです。

市内でおこなったモルック交流会

モルック!めちゃくちゃ良いですよねぇ!スバキリの栃木メンバーと「モルック栃木支部」を作ったんですよ(笑)

嬉しい!(笑)
鎌苅さんがさっき言っていた自治会でモルックやるのすごく良いと思いますよー!

たしかに!ソフトボールやバレーボールって学生時代の苦手意識とかもあるけど、モルックは大丈夫ですね!


聞き手:では、これにて今回のインタビューを終えたいと思います!ありがとうございました!

まとめ

・コロナによって「精神的な豊かさ」を得たい人が増えた

・これからの時代は、「ここにいしかいちゃいけない」ではなく、1人で複数のコミュニティーに自発的に所属できる時代

・「ユルさ・柔軟さ」があるコミュニティーが求められる。

・コミュニティーと自分の相性は入ってみないとわからない。入って「あ、違った」と感じたら、辞めてOK。

・スバキリは、まさにこれからの時代のコミュニティー!「チャレンジする人を応援したい」と思うあなたは、ぜひスバキリ一味へ!

◆イラスト―やましゅう

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◆取材・執筆―水樹ハル

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