子どもたちのためだと思うと 苦手な「お願い」もたくさんできた  木野東小学校 花火大会 佐々木健一さん

プロジェクトオーナーさん

これまで約1000件のクラウドファンディングをプロデュースしてきたスバキリ一味。ひとつのプロジェクトに複数のメンバーが関わり、全員で目標金額の達成を目指して動きます。そのなかでのライターの役割は、プロジェクトオーナーさんのお話を直接じっくりと伺い、文章へと仕上げていくこと。そのため、終了したプロジェクトであっても、「その後、どうなったかな……?」と非常に気になります。

この企画では、そんなスバキリ一味のライターたちが持ち回りで、今まで担当したなかで特に印象的だったプロジェクトオーナーさんにオファー。プロジェクト実施中や、その後の話を聞かせていただき、クラウドファンディングの実態を深掘りします。

第7回目のゲストは、スマイル補聴器 代表の佐々木健一さんです。

佐々木さんは昨年、自身がPTA副会長を務める北海道十勝地区、音更町の木野東小学校の子どもたちに「小学校の思い出に残る花火大会をプレゼントしたい!」と、クラウドファンディングを実施されました。

コロナ禍で元気をなくしている子供たちに花火大会をプレゼントしたい!!
キャンプ、バーベキュー、肝試し大会…コロナ禍、子どもたちが楽しみにしていた夏の行事が中止に。北海道十勝地区、音更町の木野東小学校の生徒に思い出に残る花火大会をプレゼントしたい!と保護者が立ち上がりました!音更町の特産品のPRも兼ねた、みんなが笑顔になるプロジェクトです。

コロナの影響で、小学校の思い出となるはずの行事がことごとく中止になってしまった、当時の6年生。その子たちのために、何か保護者としてできることを……とこのプロジェクトは企画されました。

子どもたちの笑顔を見たい!そして、せっかくだったら音更町のよさを全国のみなさんに知ってほしい!と、ご自身のビジネスとは全く関係のないところで奔走される佐々木さんの姿は共感を呼び、147名、899,000円の支援を集め、無事花火大会を開催。地元の新聞にも大きく取り上げられました。

ライティング担当は石原でした。

仕事のカタチは変わっても、「柱」は変わらない! 〜変化を味方に、自然体で今を生きる〜
「別に『頑張って決断した!』ってわけじゃないんです。なんか自然の流れで決まったかんじ」穏やかな表情、けれど真っ直ぐなまなざしでこう口にした石原さんは、取材した今年1月、「変化の只中」にあった。これまで8年間続けてきた「整理収納アドバイザー」...

純粋に「子どもたちのために!」と奮闘される佐々木さんの姿、そして「裸の大将」のプロフィール写真がとても印象的だったため、改めてお話をお伺いしたいと思い、対談をお願いしました。

 

どうしてクラウドファンディング?

佐々木さん、ご無沙汰しています!急なお声がけにも関わらずありがとうございます!

お声がけいただいて嬉しかったです!ありがとうございます。よろしくお願いします!

スバキリ商店でサポートするクラウドファンディングって、圧倒的にプロジェクトオーナーさんのビジネスにつながる案件が多いんです。そんななかで、佐々木さんのプロジェクトは、純粋に子どもたちに思い出を作ってあげるためのものでした。

プロジェクト文では、ご自身の事業のことには全く触れなくていい、とおっしゃっていたのも印象的だったのですが……そもそも、なぜクラウドファンディングだったのですか?

昨年、娘が6年生になって小学校生活最後の年になり、僕自身もPTAの役員として活動して7年目、最後の年になりました。コロナで思い出が本当に少ない学年で、最後に何かしてあげたいと思いながら、具体的に案があったわけでもなかったんです。

6月上旬にビジネス交流会で花火師さんと出会い、コロナ禍で花火業界も大変だという話を聞いたときに、子どもたちのために花火を打ち上げてもらって、喜んでくれたらいいな、とふと思ったんです。でも、現実的にPTAでは予算がないし厳しいなと感じていました

その3週間後、別のオンラインでのビジネス交流会でスバキリさんと出会ってたんです。クラウドファンディングだったら花火大会をできるかもしれない、とパッと思ったのがきっかけです。

スバキリさんと出会ってクラウドファンディングという手段を知った、ということですか?

それまでに僕の周りでも、クラファンの支援を訴える人はいたのですが、まさか自分がやるだなんて考えもしていませんでした。
でも、日本でいちばんクラファンを手掛けられている小西さんとご縁をいただいたというのは、心強いし、勝手に運命めいたものを感じたんです。

そうだったのですね!ばっちりのタイミングで出会いが重なったのですね!!

 

 

いろんな運が重なって

デザイナーがサムネイルに入れた「オヤジ、一世一代の挑戦!!」というキャッチコピーも、佐々木さんのプロフィール写真と相まって、とてもメッセージ性の高いものになりました。

当初、花火のフリー素材でサムネイルを作ってもらおうかという話だったのですが、デザイナーが、佐々木さんの裸の大将のプロフィール写真がとてもインパクトがあるから、サムネイルに入れたい!ということでこのサムネイルになったんですよ。

地元の新聞社の方も、この裸の大将の写真が、覚悟が感じられて応援したくなった、って言ってくださいました(笑)。

くすっとするのだけれど、佐々木さんのお人柄のよさが伝わってくる、すごくいい写真ですよね!

ありがとうございます!
僕は裸の大将に似てるとか、野球やってるって言ったらキャッチャーやってそうとか、柔道やってそうとか、仙台四郎っていう福の神に似てるとか……いろいろ言われるんですよ。だったらコスプレして写真撮ってもらおうってクラウドファンディングをする1年ほど前に撮ってもらったばっかりのものなんです。

それもやはり、いいタイミングでいい写真が撮れたのですね!

そうなんです。子どもたちに花火大会をしてあげたいというのも、去年だったからみなさんの共感と応援をいただけたけれど、今年くらいコロナが落ち着いたタイミングだと、去年ほどの共感は得られなかったかもしれませんしね。

いろいろな運とタイミングが重なったのだと思います。

 

 

せっかくやるなら十勝の魅力も伝えたい!!

クラウドファンディングをやってみて、いちばん大変だったのはどんなことでしたか?

そうですね……私は十勝に引っ越して来て今年で20年になるので、リターンにたくさん十勝のものを出そうと考えました。せっかくクラファンをやるなら、この大好きな十勝のことを知ってもらったり、十勝産のおいしいものを食べてもらったりしたいなと思ったんです。
そのリターンの依頼とかやりとりとかがいちばん大変でしたね。

私も、どのリターンを支援しようかな……と楽しく選べたので、十勝のおいしいものの紹介にもなるし、とてもいいリターン設計だなと感じました。

そうなんです!十勝はお菓子の原料やチーズなど、おいしいものがたくさんあるのですが、原料として使われるものが多いので、なかなかブランドとしては浸透しきっていないのですよね。

ぜひクラウドファンディングのリターンに提供してください、と大きな企業にも、ツテをつたってお願いしに行ったのですが、それがなかなか大変でしたね。

もともとのお知り合いだけではなく、リターンとして出してもらうリターン提供先を新たに開拓されたのですね!?そうなんですよ。普段、補聴器やさんではそんなことはやらないので(笑)、勝手がわからずにいろいろ戸惑いましたね。

新たなチャレンジだったのですね!私はパスタやお菓子作り用の粉をリターン品としていただいて、こだわりの小麦っておいしい!とびっくりしました。
そうやって、十勝のおいしくて安全なものを知っていただいたけたらとても嬉しいです。十勝地区は、若い人たちは進学や就職で都会へ行ってしまい、人口が減っているので、少しでも地域を盛り上げられたらいいなと思って、リターンは考えました!

 

 

僕はやるって決めただけ

スバキリ一味のサポートはいかがでしたか?

初めてのクラウドファンディングは、他人のを見ても、何をやったらいいのかさっぱりわからなかったので、スバキリ商店さんにサポートしていただいて、本当にありがたかったです。ページ自体も、僕はインタビューをしてもらって、載せる写真を用意しただけですから。

リターンの追加のことや、発信の仕方、コミュニティまで、ほんとありがたかったです。

公開前の事前準備はどんなことをされましたか?

もちろんスバキリ商店さんや、他の方からもアドバイスをいただいたので、スタートする前から告知を始めて、周りの方に知ってもらいました。
いろんな方のFacebookライブに出させてもらったりしましたね。おかげさまで、いいスタートダッシュがきれたと思います。

あと地元で反響が大きかったのは、やっぱり新聞に大きく掲載していただいたことです。

クラウドファンディングや、それ以外の寄付金・協賛金というかたちで、地元の方たちに本当にたくさんのご支援をいただきました。

こんなに大きく取り上げてもらえるってすごいですね!

地元の大きな新聞社さんにはツテがなかったので、知り合いの方に紹介してもらって、インタビューをしてもらいました。
なかなかここまで大きく載せてもらえることってないのですけれど、記者さんが応援したいと思ってくださったことと、たまたま大きなスペースが空いたということで、掲載いただきました。これもタイミングがよかったんですよね。

花火大会開催後にも、大きく新聞に取り上げられた

 

 

花火大会の実現まで

資金が集まってから、花火大会の開催までは順調でしたか?

そうですね……やっぱり花火を上げるということで、役場だとか河川事務所だとかにいろいろと許可をとらないといけなくて、正直その時期は、花火大会の準備にかかりっきり。仕事は手につかなかったですね(笑)。

たしかに!いろいろ許可取りが大変ですよね。

でも、役場にクラファンのチラシを持って行って、「子どもたちのために花火上げたいと、こういう活動をしてきたんです」と伝えたら、役場の方たちも応援してくださって、ありがたかったです。

予算をほぼ全部花火に使いたかったので、支援してくださった方以外には、花火を上げる日時や場所を内緒にしました。そのため警備にはお金はかけず、PTAや父兄のご協力でやりきることができました。

 

 

当日を迎えて

6年生の子どもたち、嬉しかったでしょうね。自分たちのために上げてくれる花火を見る機会なんて、そうそうないですもんね!
当日の様子を撮影されたYouTubeを拝見したのですが、子どもたちの嬉しそうな声が入っていて、こちらまで嬉しくなりました。

150発、6分ほどの花火大会だったのですが、卒業文集に、6年間の思い出としてして、この花火大会のことを何人もの子が書いてくれていて……それは嬉しかったですね。

お子さんたちも、お父さんのことが誇らしかったでしょうね。

当時6年生だった娘は、卒業文集では触れていなかったんですけどね(笑)。
ちなみに息子は、花火を上げる翌日が地方での野球の大会だったので、見られなかったんです……。

それはなんと気の毒な……。でも、頑張るオヤジの背中は見せられたと思います!!

 

 

ビジネスへの波及効果

このプロジェクトに関しては、お仕事とは切り離されて活動されていましたけれど、私は佐々木さんのお人柄に触れ、母の補聴器のことで相談させてもらったことがあるんですよね。
そういう人、他にもいらっしゃるんじゃないでしょうか?仕事とは関係のないところで応援していただいたのですが、おかげさまで、補聴器のことで相談してもらったりしましたね。
新聞を見て花火のご支援もいただいた上に、「耳が遠くなってきていたのだけど、補聴器ってどこに相談していいのか分からなかった」とご注文いただいたこともありました。

そうなんです!補聴器のことって、どこに相談したらいいのか分からないんです!全く知識もないから……。
佐々木さんが補聴器に関するセミナーを開催されているのを知って、『キテネ』のクラウドファンディングにのリターンとして提供されたのを機に、そのセミナーを受講することにしました。佐々木さんと、『キテネ』のプロジェクトオーナーの大坂さんはお知り合いだったんですよね。

ボタンひとつでスマホにヘルプメッセージが届く!みまもりボタン「キテネ」
IoTで「困った」を解決したいと、進化版ナースコールを開発しました!「キテネ」は、家の中でも外出していても、ボタンの押し方で、各自設定した3種類のメッセージをLINE等に送れるデバイスです。生活にお手伝いを必要とされる方とその家族をボタンひとつで結びます。

ありがとうございます。そうなんです、『キテネ』は私もとてもよい商品だと思っているので応援したいと思ってリターンとして提供させてもらいました。

「聞こえづらさ」が認知症をはじめ、いろいろな症状の原因になりかねないということを、ひとりでも多くの人に知っていただきたいと思ってセミナーや相談会を開催しています。補聴器を売りたいわけではなく、お困りごとのお役に立てたらなと思ってこの仕事をしているんですよね。

佐々木さんのそういう「安心感」のあるスタンスは、聞こえに悩まれる人にはとてもありがたいと思います。巡り巡って、お仕事につながること、これからもありそうですね

 

 

これからクラウドファンディングをする人へ

クラウドファンディングの経験者として、これからクラウドファンディングをされる方に、何かアドバイスをいただけますか?

僕の言葉がアドバイスになるかどうかは分からないのですが……。
ほとんどの方は、ご自分のお仕事に関することで、クラウドファンディングをされると思います。そのお仕事の先にある、誰かが喜ぶ顔を想像して動かれると、応援してもらいやすいのではないかと思います。

僕は性格的に、「自分のため」となると支援をお願いしづらいのですが、子どもたちのためと思うと、声を大にして「応援してください!」と言うことができました。

みなさんも、これからされるクラウドファンディングの先には、喜んでもらえる人がいる、という意義を伝えて、応援をしてもらえるように頑張っていただけたらと思います。

それは本当に大切なことですね!
今日は貴重なお話をたくさん聞かせてくださり、ありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました!

佐々木さん関連のURL

・出張訪問専門 スマイル補聴器HP:

出張訪問専門 スマイル補聴器 ホーム
出張訪問専門スマイル補聴器です。補聴器の購入や修理メンテナンスを行っております。道東地方を中心にご希望の場所へ無料出張いたします。弊社購入製品は勿論ですが、他社様でご購入頂いた製品も修理メンテナンスいたします。無理な販売は致しませんのでお気軽にお問い合わせください。

・佐々木さんFacebook

Facebook

 

対談を終えて

佐々木さんほど、絵に描いたような「いい人」はなかなかいないんじゃないだろうか、と思います。

プロジェクト自体も、「いい人」でないと企画・実施できない内容だったし、私たちスバキリ一味のメンバーと接する態度も終始「いい人」だったし、補聴器販売という仕事に誇りを持っていらっしゃる理由も「いい人」だし、受講した補聴器セミナーの内容も、SNSでの発信も、すべて「いい人」なのです。

ここまで重ねて書くとしつこいと思われることは百も承知なのですが、担当ライターとしては、とにかくみんなに佐々木さんの「いい人」度合いを知ってほしい!と心から思うのです。

というのは…佐々木さんが「いい人」であることが、今回のプロジェクトの成功や、補聴器販売のお仕事にもつながっているというのが私の見立てなのですが、それって私たちがビジネスに向き合う上で、大きなヒントになるような気がしませんか?

バブルの頃の日本だと、「いい人は騙されてしまう」「ずる賢いくらいじゃないと、ビジネスはうまくいかない」のような風潮があったような気がしますが(想像だけど)、今の時代のビジネスは、「いい人」は最強じゃないかと思うのです。

「いい人」=たくさんの人に「いいこと」をしている=たくさんの人が恩返しをしたいと思っている

この構図からして、サービスの品質が均一化してきて、「この人だから買おう」という購買が起こる今の時代では、「いい人」が選ばれる確率が高まるように私は感じるのです。

だってこの写真!見ているだけで元気が出ますよね。(再掲)

パソコンの待ち受け画面にしたいくらいです。

お人柄が、プロジェクトの成功につながっていった過程を今回改めて知ることができ、貴重な対談となりました。

 

スバキリ一味の「中の人たち」は、プロジェクトオーナーさんたちの挑戦を応援することに誇りとやりがいを感じながら、今日もプロジェクト作成に励んでいます。